第3話

 自分の話をなかなかしてくれない女の子がいた。少し、自分と似ているような気がしていた。彼女の嫌な一面を見たことがないし、フィクションで彼女が出てきても悪役にはならなそう。


 そんな彼女に、好意を持っていた時期があったんだ。秘密主義で、背中を叩く力は強いのに、優しい雰囲気。今まで会ったことがない、不思議な女の子。


 数年に1回ぐらいだけど、こう思う。


「私が、男の子だったらな」


 って。たまにね、ほんの少しだけ思う。


 なんとなく、本人には伝えなかった。友達のままだって、十分嬉しい。だけど、彼女にする態度が冷たくなっていった。仲良くなればなるほど、離れようとしてしまう。


 私の髪が短くなれば「かわいい」と言ってくれる彼女。


 誤解されやすくて、でも言い訳もマイナスも言わない彼女。


 コーンの食べ方と観光地の回りかたが私と似ている彼女。







 嬉しい。楽しい。やっぱり、


 やさしくしないで。





 こころはずっとそれに支配されていた。このことに気づくのは数年後。こじ開けるまで、胸の奥の奥に大事にされて、うずくまってた。



 またいつか会えたなら、その時は本音ダダ漏れで会いたい。伝えなくとも。あなたといるのが楽しいと、伝えられる人になりたい。



 本当の恋。

 まだわからない、でも、過去にはない。

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