箱庭の海で眠れたら

清見ヶ原遊市

箱庭の海で眠れたら

箱庭の海の中でも輝いて 力の限りに鰭を揺らして


限りないウソの中でも僕たちは限りないものになろう なりたい


その水の冷たさにかつて泣いたこと、忘れなくてもきっと笑える


止まらない流れの中に逆らって そうして生きることにしましょう


君たちと私たちとはいつの日か硝子の向こうで出逢う日が来る


深海も地上も空も夢だけはいつも優しい 胎にいるよう


ぐるぐると重たい水の中廻る 強く生きたね生き抜いたよね


沈みゆく陽を揺らす水の影浴びて私は歩く、この鰭で歩く


とどまらず水は進みて海となる。そうしていつか、また還るから。


恋するを溺れると言うものならば魚の恋はどんな苦しみ?


日没を共に待ってる僕たちは一瞬命がすれ違うだけ


ゆるやかに箱庭の海に日が落ちて隣りの君さえ今は見えない


いつの日か水も光もない場所でまた会いましょう、名も知らぬ君


止まれない君が悲しや動けない我が悲しや青い地球で


眠ろうか、青い流れに抱かれて……明日また強く泳ぎだすから。


ばらばらにほどけるようなきらめきを、おおきなうねりをここに残して


目に見えぬ重さにつぶれる日が来ても光を目指したことは忘れず


眠れない夜は長くていきつらい。誰か私と夜を眺めて。


静かなる海の中にも星月夜未だ名もなき命が燃える


眠れないペンギンが1羽羽ばたいた。空より暗い海に飛び立つ。

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箱庭の海で眠れたら 清見ヶ原遊市 @kiyomigahara

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