第10話

 「おっ。なんだこのハーゲンなんちゃら、上手いな」


風呂上りのエキドナはバスタオル一丁でアイスを頬張る。


「エキドナちゃん。ウチは男所帯なんだからちゃんとしてくれよ」


神宮前翠は菜箸を振って年甲斐もなく真っ赤になった。


あれから神宮前神社の神主、翠は悪魔の力の封印に成功したと“嘘”を発表した。

現代に蘇った悪魔として記者会見を行い翼や赤い目を見せ、テレビやSNSで発表し

報道陣や政府の関係者、研究者が毎日押し寄せる。


エキドナとリリスの美しさに神社は大人気となり賽銭がうなぎ上りに増えた。

だが露出が増えたことで誰もこの悪魔姉妹を危険な存在とは認識しなくなった。

最近は芸能事務所がスカウトに来るほどだ。



「おいエキドナ。俺のアイス勝手に食うな」


碧はGペン片手に墨だらけの手でエキドナのアイスを奪おうとする。


「風呂上りなんだからその汗臭くて墨だらけの手で私に触れるな」


翼をひろげるとリビングの中で空中で一回転して碧を避けた。


「くそう!」


天井でアイスを堪能するエキドナを悔しそうに見る碧のズボンの裾を引っ張るリリスは顔を真っ赤にしてアイスを碧に返そうとした。


「りりたんはいいんだよぉ♪ いっぱい食べて大きくなろうねー」


かなり鼻息あらく変態的な顔つきでリリスの頭をそっとなでる碧。


「あー言い忘れてた」


「あ?」


碧は眉をひそめてエキドナを見る。


「リリスは生まれて数年で封印されたから本当に幼いのだが、あたしらは人間よりすごく長寿だからね、お前の生きてる間にリリスが大きくなるなんてあり得ないから」


固まる碧。下をうつむくリリス。


「な、なんてサイコーなんだ! ずっと幼女でいられるなんて!」


「うわー出た変態」

 

エキドナは辟易とした表情になった。

碧はリリスの前に膝まづくとまるでプロポーズのようにリリスの手を掴んだ。


「これからもヨロシクね。りりたん」


リリスは真っ赤になってうなずく。


「碧。はたから見たら犯罪だからなマジで」


父は晩御飯の味見をしながら首を横に振った。


リビングにあるテーブルにはオムライスが4個とサラダが乗りの5脚あるテーブルには

大きな熊のぬいぐるみがお札だらけの古い本を抱いて佇んでいた。

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リリスブックス かよきき @chaozu

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