第21話 予想外の行動

 いつものように執務室でヒューイとカトリーヌが政策の打ち合わせをしていたら、報告官が伝書鳩のメッセージを持ってきた。


 ヒューイが受け取って、内容を読んだ後、カトリーヌに渡した。


「ヒューイ、これって」


「おかしなことになったな」


「これは予想していなかったわ」


「小作農制度と税制改革か。これはまだ時期尚早ということではなかったのか」


「ええ。でも、一部の地域で試験的に実施してみたいとは思っていたわ。恐らく部屋に残した私のメモを見て、お父様が実施しようと思ったのでしょうけど、アードレー家の領地で試してみるってのは、面白いアイデアだわ」


「どうする?」


「結果を見てみたいし、できれば、情報交換したいわ」


「じゃあ、俺のアードレー家への復讐は中止か。ターゲットを国王に移すかな」


「ヒューイ、ごめんなさいね。アードレー家は私のアイデアを試行してくれる協力者になっちゃったみたい」


「カトリーヌはぶれないなあ。親子の情とかはまるでなくて、協力者かそうでないかだけだものな。俺もうかうかしていると使えない奴になって、見向きもされなくなるかもな」


「もう、ヒューイは別枠よ。あなたはいてくれるだけで私の力になるもの」


「ヒューイ様、カトリーヌ様、アードレー家に潜入しているメイドたちにはどのように指示しましょうか」


 また二人でイチャイチャされてはたまらないとばかりにリリアが口を挟んできた。


「カトリーヌ、いつも通り、好きなようにしていいよ」


「そう? じゃあ、メイドたちには父に全面的に協力するように言って頂戴。それと、毎日私に報告を送ってくれるようにもお願いしてね」


「かしこまりました」


 リリアが部屋の外に待機している報告官に伝言を伝えた。


「ところで、ヒューイ、王国の国王には何をするつもり?」


「戦争しかないだろう」


「圧倒できるの?」


「まだ無理だな。でも、ちょっと待てよ。アードレー家が協力してくれたら圧倒できるかもしれないぞ。そのためには、まずはマークス子爵を助けるか」


「あら、もうお爺様たちにも手を出していたのね」


「ああ、君にひどいことをしたのだろう。許せないリストの上位者だ」


「そうね。大好きだったお爺様の変貌ぶりが、家族から見放された私の人間不信にとどめを刺したわね。変貌後のお爺様はとても怖かったわ。それと、母の兄弟も、私にいたずらしてきて、さすがにそれは母が激怒して止めたけど、ろくでもない人たちばかりだったわよ」


「うーん、それはますます助けるの嫌だなあ」


「どうして助けるの?」


「君の母上が恨むだろう?」


「何をどうしても、母は私を恨むことをやめないわ。最愛の息子をうばったのですもの」


「君は母上とは事故の前から仲が悪かったのか?」


「どうかしら。八歳までは、ああしなさい、こうしなさいと口うるさい母親だったわ。思い込みが激しく、自分の考えを娘に押し付ける人で、私はよく反発した。でも、母の言うことを聞かなかったから、兄が事故にあったんだって私は思ってたの」


「そうか。でも、よくある母娘関係かな?」


「シャルロットには最初から甘かったわ。でも、私に厳しいのは王妃教育のためだと思っていたし、お母様も口癖のように王妃になるんだからと言っていたわ。事故の後は私には一言も口をきかなくなったけど、寂しさよりも開放感の方が強かったわ」


「じゃあ、マークス子爵は助けないでおくか」


「マークス子爵の一族は滅んだ方が世のため人のためよ。助けるなんて無駄な時間を使う必要はないわ」

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