第33話 魔女のスキルはややこしい。
神様からの依頼も達成し、スキル源泉のレベルが1つ上がった。
これで敵寄せ効果が少しは軽くなっているといいんだけど、と、ステータスを確認しようとしたのだけれども。
【魔女の固有スキルがレベルMAXになったため、魔女の瞳の制限が解放されました】
はい? またレベル制限があったのか!
道理で……・
【源泉のレベルがMAXになったため、魔力回復系統と魔力増大系統のスキルを統合しました】
へ?
【龍脈が統合されたため、魔女の家レベル4が解放されました】
【地脈が統合されたため、魔女の家レベル5が解放されました】
え?
【源泉のレベルがMAXになったため、魔女の家レベル6が解放されました】
ちょっ?
【魔女の家のレベル6が解放されたため、レベルがMAXになりました】
【魔女の家がレベルMAXになったため、魔女の使い魔のレベルがMAXになりました】
【条件を満たしたため、職業が魔女から大魔女に変更されました】
いや、待って。色々追っつかないんだけど。
突然のお知らせの多さに目が点になる。
そもそも、このお知らせって、魔女の瞳か?
ステータスを確認すると、確かに職業は大魔女になっていた。
魔女の瞳は制限が解放されたとあったけど、実際にはレベルMAXになっていたみたいで、【魔女の瞳:レベルMAX(プライバシー保護モード)】と注意書きがされていた。
魔女のおとぎ話にあった、全てを暴く瞳モードにもなれるようなのだけど、情報量も多いし、わたしの性格を考慮して、通常はプライバシー保護モードになっていらしい。
わたしの性格を考慮してって何? って思いもするけれど、確かに、他人の黒歴史とか早々知りたくない。他人の弱みを知りたいっていう人なら喜んで見るかもしれないけど、わたしはそういうのは別にいらない。
なので、確かにプライバシー保護モードというので正解だろう。このモードでも鑑定は出来るみたいだし、人様の情報でいえば、プライバシーの保護とは? と、思わず思っちゃうくらいには、情報が見える。特に女性陣の恨みを買いそうな情報とか……。
それにしても、スキルのレベル上げに制限が多過ぎではないだろうか?
あ、でも、魔女の家がレベルMAXになったら使い魔もレベルMAXになったのは意外だったかな? それとも、MAXになれるだけの経験値はあったけど、こっちもレベル制限があって、MAXになれなかったとか……。
いや、魔女の家の様に特定のスキルのレベルが上がらないと無理というパターンも……。
……でもそれって、スキル選択の順番によっては詰むのでは……?
わたしはうちの子達の意見を聞いてスキルを取ってたから良かったけど、源泉なんて普通取らないよね? ぱっと見、なんじゃそれってなるし……。
取ったら取ったで、自衛手段とレベル2以上の魔女の家という安全地帯がなければ一気にお陀仏だし。
……まったくこれだから、魔女は当たり職とも外れ職とも言われるんだよ……。
「何かあったのか?」
「んー。源泉のレベルをあげて貰ったじゃない? その影響で、色々スキルが上がったみたいで……」
わたしが一人百面相をしてたからか、貴史に問いかけられたので、新しい魔女の家がどういうものか確認しつつ、答えた。
「スキルがポンポン増えて、しかも上がりやすいとか、羨ましすぎるんだけど」
貴史の言葉に苦笑で返す。
そちらさんだって、スキル5つはレベルMAXなんでしょ。
一つは異世界言語だとしても、十分にチートですよ。
と、心の中だけで返す。
内心では貴史の言葉に同意したい気持ちがもちろんあるからだ。
「……え……、マジ?」
魔女の家レベル4の説明を見て、動きが止まってしまった。
こ、これは、試してみたい!!
「わたし、今からレベルの上がった魔女の家を試してくるけど、みんなどうする!?」
一同に向かって問いかける。
興味がないのならわたし一人だけで試そうと思ったけど、みんなも付き合ってくれるらしい。
全員で移動するなら、こっちの家を消してもいいかな。
全員が外に出たのを確認し、作ったばかりの魔女の家レベル3を片付ける。
そして、まったく同じ場所にレベル4の魔女の家を建てる。
「魔女の家! レベル4!」
ミステリーサークルでも作るのか、風が円を描き、そして、ドォンと高い塔が現れた。
「は? ナニコレ」
「家っつーか、タワーだな」
「うわ、上が雲に隠れてるんですけど」
「え、まって……。階段あるけど、これ、上るの!?」
「…………砦?」
「あらまぁ……高いわねぇ……」
それぞれの感想を聞きながらわたしは塔へと向かう。
「階段上りたい人は階段で来てもいいよ。わたしは中にあるエレベーター使うけど」
外階段を指差すが誰もそこには向かわなかった。
まぁ、当然か。
霧の雲とはいえ、雲よりも高い所にてっぺんがあるわけだし。
エレベーターに乗る。
階は1階とRしかない。
……もし、外階段歩いてたら、途中でエレベーターに乗るとかも出来ないんだ。と密かにぞっとしつつ、Rボタンを押す。
数秒後、ぽーん。と軽い音がして扉が開く。
そこに広がる景色は、それなりに広い屋上と。
「……何アレ」
皆の疑問を恭介が指を指して尋ねてきた。
「魔女の家 レベル4。天空の屋敷……。なんだけど」
わたしの言葉は半端に止まる。
だってねぇ。
「観光地で有名な湖に浮かぶ城?」
「……あれ? 湖だっけ? 確か海だったと思うけど」
わたしの間違いを貴史が訂正し。
「あれ? オレ、某テーマパークの城だと思ってた」
「いや、城というか建物もそうだけど、そこに続く道についての感想はないの?」
鏡、恭介が続く。
そこへと至る道、ねぇ。
「ギリシャの神殿の柱と鳥居を混ぜたような、また微妙な感じの道だな」
「わたし実物見たことないけど、千本鳥居ってあんな感じ?」
大地の言葉に疑問を投げかけると拓がやや頭を傾げる。
「千本鳥居はもっと間隔が短いし、屋根はない。だから、大地の言ったパルテノン神殿の作りの方が近いとは思うのだが……。屋根が無ければ鳥居だな」
日本の神様が作った世界だからかな? なんて話しながら、わたし達は水の上では無く、雲の上に浮かぶ屋敷へと歩き出す。
正直、雲の上を歩くのは最初かなり、おっかなびっくりでした。
雲の上にある島は、観光地だったらそれぞれのお店とかだったりするのだろう建物は、家の形をした温室だった。
家具とかはなく、植物が青々と育っていた。
「おお。イチゴのハウスだ」
窓から家の中をのぞいて思わずそんな事を口にする。
「街路樹とかは基本的に果樹みたいだな」
「プランターに植えているのはハーブ系、かな?」
辺りの観察と、熟したフルーツのつまみ食いをしつつ、わたし達は石畳を歩く。
ちなみに季節はないらしく、イチゴも豊作だったけど、スイカとかメロンも豊作でした。後で冷やして食べようと収穫して、静さんに持って貰った。
【荷運び】はやっぱり超便利。
今の中央であり、高台にある屋敷にたどり着き、そっと中身をのぞく。
こちらはハウス栽培をしている事もなく、少し歩いてみた感じ、普通の生活空間が整っているようである。
階段、エスカレーター、エレベータが揃っていて、ホテルとかみたいに、ひっそりと矢印でどこに何があるかとか書いてある。
「城をホテルに再利用っていう感じだな」
貴史の言葉にわたしは、ちょっと納得した。新しくできたホテルというよりは、古い建物を再利用しましたっていう印象がある。……エスカレーターとかエレベーターは付いているけど。
全体的にアンティークな家具が揃っているからだろうか?
なんか今までの居住区にちょいちょいあった一般家庭においてそうな物がなくなって、アンティークな家具達である。
おとぎの国の世界に紛れ込んだ印象がとっても強くなる。
そして廊下や大きな部屋などに所々にある地図には赤く点滅する三角があった。
現在地を示しているのだろう。
「これってこの世界の世界地図?」
わたしの視線に気づいた恭介が尋ねてくるので頷く。
「……インスタントな世界と聞いていたから、てっきり、地球の地図と似てたり、反転してたりしてるのかと思ったが……」
拓の言葉にわたしも確かに、と頷きつつ見ていると、魔女の瞳が反応してくれた。
「どうやら、このお遊びに参加しているもう一人の神の世界の反転世界らしいよ」
へー。と五つの同意と、反転世界? と静さんが首を傾げながらの呟きが聞こえた。
上下逆とか、海と陸が逆とか、そんな感じです。
「赤いのは、現在地?」
「そう」
「じゃあ、この黒丸は?」
大地が地図を見ながら、ところどころにある黒い丸をしめす。
この丸は明らかに地図に追加した記号と分かるからだろう。
「えっとね、着陸出来る場所、だって」
「は? チャクリク?」
はてなマークを飛ばしながら問い返してきた大地に、わたしは、魔女の瞳の説明文に合わせて、黒丸の一つを押す。
「ここへ移動」
ガダン! ガゴンガゴンカコンカコンガコンガコンカコン……。
城が一度大きく揺れて、何かが動く音がする。
窓から外を見れば、鳥居の様な渡り廊下が雲の中に収納されて、土台でもあった伸びきっていた雲もふわりふわりと溶けるように消えていく。
そして、わたしが造った塔がゆっくりと離れていく。
それを眺めながらわたしは告げる。
「魔女の家、レベル4。天空の屋敷。かっこ移動可能かっことじる。との事です」
わたしは肩をすくめる。
「正直、魔女と天空の城がどう結びつくのかさーっっぱりなんだけど、ファンタジーとしては凄く有りだと思った」
そんな本音を皆に告げると、彼らはちょっと笑って。
「まぁ、魔女で魔法って考えれば、なんでも有りになる。っていう考え方もあるよな」
魔法だしな。ファンタジーだしな。異世界だし。とそんな呆れた同意の答えと共に。
「……異世界って凄いのねぇ……」
静さんの心からの感嘆の言葉にわたし達は大きく頷くのであった。
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