第7話 新しいスキルを選ぼう
レベルが上がって新しいスキルを選べるようになった。
近所のお姉ちゃんが聞いて来た物語から考えると、魔女の杖は「力」に関係するものっぽい。
それが権力なのか、物理なのか、魔法なのか、は分からないけど。
さすがにレベル1の魔女の杖で権力はないだろうから、物理か魔法か、だろう。
神殿でスキルを選ぶ時にもちらっと考えたけど、その時の考えは大きく間違ってなかったっぽい。先に物語を知っていたのなら自衛の事も考えて、取っていた可能性はきっと高かっただろうな、とは思う。
でも、これから先の事を考えると、今必要なのはこれじゃないよね、って思う。
何故か、本人の意志を無視して魔女に弟子入りする事が決まっているわけで……。
いや、どの職でもそうだけどね。誰かの下について勉強するのは。
ただ、師匠を選ぶ権利もないとは思って無かっただけで。
なので、現状は移動する時の自衛のためのスキルは必要なさげなんですよ。決まったら迎えに行くって言われてるし。
むしろ必要なのは、逃走用になりそうな魔女のホウキか、癒やし要員になりそうな魔女の使い魔なのでは!? って考えたりする。
……魔女の弟子って何するのか一切情報がないの!
だからこそ、この二択がちらりちらりとずっと過るのですよっ。
それもあって新しいスキルを選ぶことはすぐには出来なかった。
確かに今回、新しいスキルが選択出来る様になったのは早かったなって思ったけど。
でもそんなの最初だけなんじゃないかな?
後半になれば新しいスキルを覚える事はきっと難しくなると思うんだ。
ゲームでもそうだし、現実だって、基本問題はともかく応用になると急に難しくなったりする場合だってあるし。
だから、今回は、初回と同じく、とても重要なスキル選択だとわたしは認識していた。
当然だけど、悩みに悩んだ。一晩は悩んだね。
もし、あの時、ある考えが浮かばなかったら、二晩でも三晩でも悩んでいたかもしれない。
一晩悩むだけですんだ理由は、ある気づきだった。
弟子入り先が辛くて、逃げるような環境なら、相手側は放置するだろうか?
もし、逃げられる可能性がある所なら、その対応はしてるんじゃない?
だって相手も魔女だもん。何かしらの対策が出来てもおかしくない。
逃げ出したいほど辛いところなら、それを知っていても改善しないような環境なら、スキル対策はしてそうだよね。
この場合、逃げる理由はたぶん二つ。
一つめ。師匠が人使い荒くて、理不尽。
二つめ。魔女の修行が思っていた以上に辛い。
一つめなら、さっきも思ったけど、尚更逃がすわけが無くて、魔女のホウキ対策はしていそう。
二つめなら、魔女のホウキを取ってても、何の役にも立たないのでは?
気付いてしまえば、わたしの迷いは消えた。
わたしの心の癒しのために、使い魔を呼ぼう!!
と。
使い魔の使い方としては間違っている気もする?
そんな事はきっとないはずだ。
さて、そんなわけで、使い魔に決めたのですが。決めたら決めたで、もうウッキウキですよ。
もふもふ~。わたしの癒やしのモフモフ~。
「出でよ! 我が使い魔よ!」
なーんて、そんなセリフ要らないのに、ノリノリでスキルを使ってみた。
わたしの影が動いて、ポンッと出てきたのは、真っ黒い……スズメ?
「も、もふもふじゃない!!」
てっきりネコかと思ってました! ごめんなさい!!
自分の勝手な思い込みに打ちのめされた!
ずーんと落ちこんでいると、鳥、みたら雀でもないっぽいそれがテテテテと寄ってきて、わたしをくりくりなおめめで見あげてくる。
「……ごめんね」
君が悪いわけでは無いのに。むしろ悪いのは、勝手にネコだと思い込んだわたしである。
そっと手を差し出せば、小鳥は羽を広げてわたしの手に乗った。
「っ!!」
クッ! これはこれでかわいい!!
それに考えれば餌も魔女の家でパンの家を出せば、食費を圧迫なんて事もないだろう。
「……よろしくね、……クローバー」
本当は黒羽から、クロハって付けようかと思ったんだけど、見た目の可愛さとあわないし。
見た目に合わせるとピッピちゃんとかと、黒を混ぜてクロピッピとか、コクピとかにしようかなって思ったんだけど。なんか微妙って思っちゃった。
スズメとかツグミとか、鳥の種族名、もしくは鳥そのものからって考えて黒鳥、クロトリやブラックバードなどを考えて浮かんだのが、クローバーだった。
これならかわいいし。万が一、わたしが今度呼び出した時に、つけた名前を忘れていても、きっと、連想から思い出してくれるはず!
未来のわたし、そこは大丈夫だよね!? 信じるよ!
「ピチュッ」
と、嬉しそうに鳴く小鳥には悪いけど、わたしがつけた名前の由来は、ネーミングセンスが無いって言われないための保険と、わたし自身が忘れた時のために踏まえた名前付けなのである。
……ごめんね、クローバー。
……やっぱりピッピちゃんとかの方が良かったかなぁ。なんてちょっと思ったりもしたが、わたしに新しい仲間が出来たのであった。
そして、クローバーはまさしく「使い魔」だった。
小さい見た目に反して力持ちで、賢く、「これを○○さんちまで届けて」といって籠を渡したら、小さな足で、籠の取っ手を持ち空から運んでくれる。
森では果物を見つけてくれたり、獲物を見つけたりもしてくれる。
その上、驚いた事に、風魔法が使えるのである!
有能。凄く有能。
わたしだけでなく、村のみんなに認められたクローバー。
召喚する時に魔力は消費するけど、それ以降の維持費は数時間後にちょろっと魔力を消費する感じなので、ほぼずっと出しっぱなしである。カワイイし。
下の子達もクロちゃんクロちゃんといって可愛がってるし。
……いや、これはむしろ、クローバーに下の子達の面倒を見て貰っているというか見守って貰っているというか……監視して貰っているというか……。
……ごほん。
とにかく有能な子なのです! 凄い子なのです!
さて、そんなクローバーを新しい家族の一員として迎えてからあっという間に一月が経った頃、ついに、この日がやってきた。
「お迎えに上がりました。魔女見習い様」
魔女見習いとして弟子入りするために、村を旅立つ日が。
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