第5話 魔女の錬金術はまさに魔法


 さて、外では絶賛、入れ食い状態で、ガツガツと魔女の家が食われまくっている中、わたしはお菓子の家の中に戻ってきました。

 大釜をまだ試してなかったので。

 魔女の家をもう一個出せと言われそうだけど、魔力というかMPをけっこう持って行かれるので、試すだけなら、このままここで行いたい。

 もちろん外に居る皆には外から見てやばそうだったら声をかけて、と言ってある。


 お菓子の家の中にある大釜の前に立つと、先程と同じようにウィンドウが現れ、使用するとすると、???マークがついたレシピっぽいのが現れる。

 そんな中、チュートリアルなのか、一つだけ作り方がはっきりしているのがある。

 魔女の魔法薬と書かれている。

 必要なのは【薬草+水】とある。

 そして、水のかわりに炭酸水でも大丈夫。と書いてある。

 なので、森から拾ってきた薬草と、魔女の家の蛇口からゲットした炭酸水を入れてみた。

 ポンッと混ぜ棒が出てきたので混ぜる。一回ぐるんとしたら、またポンッと音がしてゲームで見るようなポーションになった。

 ラベルには、『体力回復薬 ~微炭酸 無糖~』とあった。


「……」


 今度は、炭酸水の代わりに液体チョコを入れて見た。

 混ぜ棒がまた現れてぐるんと回したら、混ぜ棒が箱に変わった。

 パッケージには『甘さ控えめミントチョコ』とあった。

 ……これは。

 普通に面白い!!

 がさごそと魔女の家の中にあるものを物色し、色々大釜に入れてみた。

 炭酸水を入れると、ガラス瓶に入った薬か、氷が入った炭酸ジュース。もしくは失敗で、黒っぽい何かになる事が多い。

 クッキーやパイやらを入れて見たら、缶入りのアソートになった時は笑った。

 チョコドリンクも混ぜると、今度はチョコ味のアソートになった。


 その頃にはやってくる動物も少なくなり、何名かが様子を見に来て、わたしと同じく面白おかしく物色し始めた。

 数名が出たり入ったりするものだから、皆興味を持ったのだろう。

 二人は見張りに戻り、皆で色々試す事になった。

 ちなみに大人の狩人達は三回作ったら見張り交代となった。


 もうね、こうなってくると何でも御座れ。って感じでね。


「肉いっぱいあるし!」


 と、ウサギを持ってきたので、あり得そうな組み合わせとして、パイを入れると、無事にミートパイが複数出来たりもした。


「コレ美味い!」


 お菓子だけでなく肉料理も可能となったらもうお祭り騒ぎ。

 他のみんなも面白がって、いろいろな組み合わせで大釜に入れて見た。

 わたしが混ぜ棒で混ぜれば結果が出るみたいなので。

 こうなると、失敗した時も楽しくてね。

 「ああぁぁぁ!!」って皆で叫び声を挙げた後、今度こそはって張り切るんだよね。

 あと、同じ組み合わせでも、失敗する時もあるみたい。

 ゲームとかでもそういうものだし、わたしはあっさりと納得出来たのだけど、入れた本人はけっこうショックだったみたいで、俺のせい!? って凄い泣きそうになってた。

 ……肉、一個消えちゃったしね。


「こういうのはね、何回かに一回は失敗するものなんだよ」

 

 って、言い聞かせたけど。

 魔女の瞳のおかげでなんとなーく成功率は分かるんだけどね。

 それでも100%って出ない限りは失敗する物だし、魔女の瞳ではそこまでは分からないから仕方が無い。

 こういうのは楽しめればいいんだよって思う。

 お肉は無駄になっちゃった、って思うけど。こういうのは失敗して出来た物を集めて作る何かもあるからね。

 実際、五回分を試しに入れて見たところ、コレをベースにした錬金が複数ある事は分かった。

 うち、一つは木炭だった。

 そう言った感じで色々出来たのだけど、中でも一番謎だったのが。

 ナイフとウサギ、ナイフとシカなどの刃物と動物だった。

 それらを入れて混ぜ棒でぐるっと混ぜれば、綺麗に解体されて、大釜の周りの台の上に出現したのだ。

 血や内臓などは専用の容器に入れられて、皮は綺麗に処理されていて、……有ったはずの弓矢で出来た穴も、剣で斬りつけた切り傷も無くなってた。


「ナイフが消えちまうのはもったいないが、逆に言えば、ナイフよりも高値で売れるものなら、これで解体した方がいいな」

「魔女ってすげぇな!」

「見習いの安いナイフでもできるんか?」


 これにはみんな、驚きやら呆れやら、そしてしっかり金勘定もしているのは素晴らしい。

 そして、魔女が作った魔法薬というのもそれなりに高く売れる(はず)とのこと。

 魔女に弟子入りするというのがどういう事なのか、残念ながら、わたしが住む、村の人々には分からない状況。

 でも。


「金は無いより有った方が良い」


 というのは、どの世界でも共通というか、変わらないだろう。

 村の大人も同じ判断をし、村人総出で魔女の錬金の試作に協力してくれる事になった。

 もちろん、何日かにわけて、だけど。

 ちなみに、どう見ても、夕飯のおかずを出せってことだな!? っていう組み合わせもあったりしたけど。そしてもくろみ通り、煮込み料理が出たりして、おばさん大喜びしてたけど……。


 そんなこんなで魔女の大釜は大人気。

 そして、何度かやって、分かった事もある。

 わたしが使っている魔女の大釜はあくまで、魔女の家の一部であり、スキル『魔女の大釜』ではないだろう、という事。

 なんせこんだけ行ってもスキルとして発生することがなかったから。

 さらに、金を稼ぐだけなら、難しい物を作る必要がないということ。

 というのもチュートリアルで行った、魔法水薬。

 ガラス瓶に入ってたけど、使った後、そのガラス瓶が残ってたの。

 ガラス瓶は貴重だから、って、わたしが呑んで放置していた空き瓶を持って帰った物がいた。

 同じくあの日作った肉料理で、皿が一緒に出ていた物があったんだけど、勿体ないからって川で洗って持って帰っていたらしい。

 わたし全然気付かなかったけど。

 食べたり使ったりしたら消える容器とそのまま残る容器があるらしい。

 そして使ってみたところ、特に問題もなかったと。

 なので、料理は自分達が食べて、残った皿を町で売ってみたらどうだという話になった。

 それでもいいけどね、消費されるのは、材料とわたしのMPくらいだし……。

 それこそガラス瓶の材料はそのあたりにある薬草と水だし。


「なぁなぁ! クズ鉄鉱石とクズ鉄鉱石を混ぜたらどうなる!?」

「きゅうけいちゅうキュウケイチュウ休憩中!!」


 鍛冶屋の親方が鼻息荒くやってきたのを、わたしは耳を塞いで聞こえないとばかりに大声を出す。

 懐が痛まないからって、みんなアレコレ持ってきすぎだよ!? って嘆きたくなるくらいには調合したよ。

 あと、壊れた物が直るかな、って持ってくる人多すぎ……。

 結果? 半々かな?

 直ったり、新しい服になったりする場合もあったけど。

 修繕したら全然着られる洋服が、ボロボロの一枚の布になることもあった。

 その差がなんなのか、残念ながらわたしにも分からなかった。

 そんな皆のおかげで魔女の大釜調合リストはかなり埋まったな、って思った。

 全体がどれくらいだか分からないから、あくまで感覚でしか無いけど。


 ついでに子供の発想はすごいなぁっていうか、大人だとこれは入れないなっていうのを入れてくるのが子供だった。

 手当たり次第に持ってきて入れただけかもしれないけど……。

 石と球転がし虫と(あちらでいうフンコロガシ)と枝と花とさなぎの調合で、身代わりの護符が出来るなんて誰が考えるのよ……。

 品質悪くて効果は、即死を瀕死レベルに、瀕死レベルを重傷レベルにっていう感じらしいけど、十分に凄いと思う。

 一度レシピに表示されたものは、手持ちに代替品があるとそっちも表示してくれるので、そのうち、高品質の身代わりの護符とかも出来ると思う。


 そして、魔女の大釜の真価はこれだけに終わらない!


 豆とチーズを混ぜたら、味噌が出来た!

 豆と塩水を混ぜたら豆腐になったのは意外のような順当のような結果になった。

 でも欲しかったのは醤油!

 悩みに悩んで、そういえば小麦!? と、豆と麦と水と塩を混ぜたら醤油が出来た!

 味噌と水を混ぜたらインスタントな味噌汁が出来るかと思ったら低品質の醤油になった時はなんとも言えなかった。

 作った後に思ったけど、お湯を注いだら味噌汁になるのを作りたいのに、作成の段階で水を入れたら、普通に味噌汁が出来るだけじゃん。と。(結果は醤油だったけど)


 でもこれでカレーへの道はいつか拓ける! と思いました。

 前にも言ったけど、わたしはカレースパイスの作り方なんて知らないので!



 ああ、わたし、魔女になって良かった~。






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る