参話 狐ノ|祅《ワザワイ》

「やっと見つけたぞ少年」

 聞きなれた声ではないがここ最近でこんが最も探していた声。その声は坤の顔の真横から聞こえた。

「‼」

 狂乱していた女性が途端に飛び退いた。

「っはぁ・・・何だったんだ・・・」

 身体の硬直が解け坤はその場に膝から崩れた。

「おうおう大丈夫か少年」

「これが大丈夫に見えんのかよ」

 坤は女の質問に語尾が荒くなった。

「そうじゃな。窮地じゃな」

 女ののんきな発言に坤は毒気を抜かれてしまった。

「あlkふぁあdfv!」

 女性はもう人間の言葉をしゃべっていない。姿さえも人の形を保っていないように思える。髪の毛が逆立ち個々で独立したように動いている。

「貴様。騒々しいぞ。少し黙らんか」

 女の口から先ほどまででは考えられないような冷たく重い声が出た。女性はその声に押しつぶされるかのように地面に倒れ込んだ。と思うと、次の瞬間には女の足が女性の顔面だった部分に直撃した。女性の体は吹っ飛び数メートル弾んだ。

(何が起こってんだよ・・・)

「俺にも分かんねぇよ」

 女は一方的に女性を攻撃している。すると女性は戦意喪失したのか一目散に逃げかえった。その様子を見た女は手を狐の形にし、ただ一言・・・

狐火きつねび猟鼠さっそ

 女がそう言った途端、逃げていた女性の周りに火の玉のようなものが浮き始めた。そして狐へと変化し食らい付くように女性に付着し発火した。

「――――――‼」

「逃がす訳なかろうて」

 女性の声になっていない叫びが学校の裏口に響いた。そして、灰と化して消えた。坤の頭は処理が追い付かず坤はその場で腰を抜かしたまま静止した。

「無事か?少年」

「あ、ああ」

「まだ状況は掴めないと思うが、少し妾についてこい」

 そう言って女はその場を去った。

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九尾の弟子 龍蚦 馨 @dryamber

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