弐話 血濡レル殺意
「ねぇ聞いた?昨日学校近くで殺人事件あったんだって」
「聞いた聞いた。すぐそこでしょ?物騒だよね」
ちょうど昨日この辺りで殺人事件があったらしく坤の教室はその噂で持ち切りになっている。しかし坤にとってはどうでもいい話題だ。興味がないのだ。だからこそ親族が坤を捨て、教室でも腫れもの扱いされるのだ。
(やっぱ、つまんねぇ奴だな)
坤の頭の中で
「今日は気をつけて帰れよ。殺人犯はまだ捕まってないから」
坤の担任が別れの挨拶を済ませるとクラスメイト達はさっさと帰り支度をして帰って行った。今日は昨日事件の警戒のため部活動も中止となったらしく、坤のクラスを含めすべての生徒が一斉に帰った。坤は全校生徒が帰るなら玄関が詰まっていると思い裏口から出ることにした。
(本当に誰もいないんだな)
「予想通りだけどな」
誰もいない裏口から出ると坤は帰路へとついた。
(そういや殺人事件があったのって坤の帰り道の途中だよな)
「そんなことも言ってたな」
(大丈夫か?)
「別に何も起きないだろ」
坤は乾の言葉を気にせずに歩いていた。すると―――
「!」
坤は突然自分の身体が動かなくなるのを感じた。
「なんで・・・なンで・・・なんデ・・・」
坤の前方から一人の女性らしき人物が歩いてくる。その女性は黒く長い髪で顔が隠れており、うわ言のように「なんで」と繰り返している。女性の赤と白を基調としたワンピースを見て、坤は違和感を覚えた。そして次の瞬間その違和感の正体に気づいた。女性が着ていたのは赤と白のワンピースではなかったのだ。
(包丁・・・持っていやがる)
真っ白なワンピースに返り血を浴びた姿だったのだ。一つ二つと坤の額に汗が走る。依然坤の身体は動かない。時間が止まったかのような道路の上をその女性だけが歩みを進めている。ゆっくりゆっくりと坤に女性が近づいていく。
(なんで動かねぇんだよ‼坤‼)
坤の頭の中で乾が必死に坤に呼びかける。しかし、坤の身体は全く言う事を聞かず表情さえもピクリとも動かない。気が付けば女性は坤の目と鼻の先に来ていた。
「ナんデワタシじャダメなノ?」
女性は坤の目の前に来ると坤にそう問いかけた。女性の血に濡れた髪の間から覗く瞳は坤を掴んで離さず、逃げることも声を発することもできない。
「なンでコタえテくれナイの?ワタしガいけナイの?」
段々と女性の声が割れてきている。もう坤には何を言っているかすら分からなくなってきた。
「jあmうsんd‼」
もう日本語・・・いや人間の言葉かすら怪しい言語を発しながら女性は手に持っていた包丁を振り上げた。
「!」
坤が死を覚悟した瞬間、暗く静かであった路地に一人の声が響いた。
「やっと見つけたぞ少年」
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