九尾の弟子
龍蚦 馨
初歩編
邂逅
壱話 酔イドレ夜半
「・・・うるさいな。もう少し黙っていてくれ」
時々そんな独り言を漏らしながら一人の男子高校生が俯きがちに歩いていた。彼の名は
(おいおい坤~!もっと会話してくれよ~)
そして、心の中にもう一人の人格を有していることだ。坤のもう一人の人格の名を
(おい坤。そこの路地裏何か居るぜ)
「・・・何かって何だよ」
(分かんねェから何かだろ?)
「それもそうか」
坤は乾の言われるがままに少し細い路地裏に向かった。
「うう~頭痛い・・・」
そこには飲んだくれた一人のアラサーくらいの女の人が倒れていた。
(なんだ。酔っ払いかよ)
「さっさと帰るか」
坤は来た方向に踵を返した。
「いや、チョイチョイチョイチョイ・・・こんなナイスバディの女性が倒れとって、無視するか。普通」
急に倒れていた人に話しかけられた坤は少し混乱した。しかし気を取り直し、女の人の方を向いた。
「酔っ払いは絡まれると面倒くさいんで」
「そうじゃろうけど・・・もっとこう・・・助けてあげようみたいな心は無いんか」
「!」
「はっ!全くその考えはなかった。って顔やめい!はうっ、大声出したから頭痛が・・・」
何とも賑やかな人だなと坤は思った。しかし助ける義理は無いので坤は無視して家に帰ることにした。
「だから待たんか!そこの二人‼」
坤と乾の関心はその女の一言に一気に移った。坤の周りには歩行者など誰一人いない。つまり坤を見て二人と言ったのだ。再び頭を押さえて痛がっている女に坤は懐疑の目を向ける。
「アンタには何が見えてるんだ・・・」
「知りたいか?知りたいなら
坤は女の言いなりになることに対して釈然としないと感じながら近くのコンビニに走った。
「ふぅ少しは落ち着いた・・・」
女は坤の買ってきた水を物凄い勢いで飲むと傍の壁を頼りに立ち上がった。
「じゃあ水はありがとうな。少年。この礼はいずれまたする。達者でな」
立ち上がると女はそう言って坤の横を風の様に去っていった。
(何だったんだ。アイツ)
「俺が知るかよ・・・」
坤は一人路地の入口で立ち尽くした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます