第4話 パンナコッタ
長男の遼平が小学校に上がり、始めて友だちを連れて来た。
幼稚園のときはママと1セットの友だちだったが、子ども同士が誘い合って家に来るのは始めてのことだった。
「そう、
「おれ、茶色い汁のかかっているやつが好き」
そう言うわりには、ソラの皿は食べ尽くされていて、ルナに取り分けていた皿にまでスプーンを伸ばしそうになった。
「今度、プリン作っておくからルナの分、残しておいてあげてね。あら、ルナはどうしたん? お兄ちゃんたち呼んで来てって」
「あっ」
遼平は慌てて立ち上がり、廊下を駆け出して行った。
そのただならぬ様子に、遼平が食べ残したパンナコッタを掻き込むソラを尻目に、遼平の後を追いかけた。
廊下の奥のレイの部屋の扉が開けられ、更にその奥にある部屋の扉も開けられ、遼平はクローゼットに手をかけようとしていた。
「どきなさい」
ナオは叫ぶように言うと、クローゼットの扉に飛びついた。
「ルナ、ルナ、ルナー」
寝室まで抱きかかえて走り、ベッドに寝かせた。
「ルナ、お願い、目を開けて、ルナー」
そこへ、レイがお茶のカップを返しに来た。
「ルナちゃん、どうしたの?」
「クローゼットに閉じ込められていて、目を開けないの。救急車を呼ぼうと思うんだけど手が震えて」
「ナオさん、それはレイがやるから、お水を飲ませてみて」
「ナオさん、八木先生に試しに電話したら、中学校に検診に来ていて今終わったから、すぐに来てくれるそうよ。あっ、門を開けておかなくちゃ」
扉の向こうから遼平たちが覗いていた。
遼平の友だちが半笑いで言った。
「死んだの?」
何てことを言うの。
その子の目の前で扉を閉ざした。
「熱中症だから、起きたら水を飲ませてあげてください。点滴が終わる頃には目を醒ますでしょう。ナオさん、心配いりませんよ」
一平たちが子どもの頃からお世話になっている八木先生は点滴をして、その後の処置の説明をして帰って行かれた。
ナオはベッドの横にしゃがみ込んだきり、ルナの傍を離れなかった。
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