第18話
その日のクレオは執務で忙しかった。そんな時に侯爵家の嫡男アロイに呼び出されてきてみれば、くだらないことを言う。
「何故私の側妃が、貴殿の息子を誘拐しなければならないんだ?」
クレオは足を組んで、せせら笑う。
アロイは大変な美男だと、社交界でも評判が高い。ロレーヌもそう思っていたとしたら、はなはだ気分が悪いと、クレオは鼻を鳴らす。
一応クレオも高い身分のせいかしれないが、容姿は女性には人気だ。ロレーヌもそう思ってくれるといいがと、吐息を密かにつく。
「すみません、殿下。妻が無理やり息子をよこすようにと、側妃様に催促されたと言ってきかないのです。息子が今回また行方不明になったのです。幸いすぐに発見されたのですが、妻は側妃様がかどわかそうとしたと言って、聞かなく」
「そうか。それは大変だったな。だがロレーヌはここから外出したとの連絡はない。おそらく奥方の思い違いだろう?・・・・そろそろいいか?私は仕事が詰まっている。証拠もないくだらないことで、私を呼ばないでくれ」
「お忙しい所、申し訳ございません。殿下。側妃様に、お話を聞きたいのです」
「なるほど、ロレーヌのことをまだ疑っているわけだな、アロイ侯爵」
底光りするクレオの瞳を見ても、アロイは無表情である。
そもそもアロイは優秀な男だ。妻の言葉とはいえ、愚かな判断だなとクレオは思う。
恋は人を馬鹿にする。
クレオはそんなことを想う。
「断る。元側妃の婚約者である男を、私の側妃に会わせるわけにはいかない」
「ならば、法律で訴えてでも、話を聞かせてもらいます」
「愚かなことだ」
このままだとロレーヌはますます悪評がたってしまうし、教会の裁判に、ロレーヌは出廷することになってしまう。
「分かった。壁を隔ててだが、告解室で、ロレーヌと対話をすればいい。だが今回だけだ。もう二度とロレーヌには近づくなよ」
「はい・・・・」
クレオはアロイとの話しを終えて、部屋を出た。
クレオはいつもそばに控えている影と呼ばれる諜報員に声をかける。
「・・・・ロレーヌはどうしている?」
「いつも通り小鳥を見ておられます」
クレオの顔が赤くなる。邪魔な前髪をかきあげた。
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