第14話


瞳をぎらつかせるクレオは、ロレーヌの手を引き寄せると、その手にそっと口づける。

ロレーヌはくすぐったい気持ちになって、笑う。


クレオ殿下はロレーヌよりも明らかに年下なのに、父親のようになってくれるという。優しくて、嬉しい。

ロレーヌにも新しい家族みたいな人ができたのかもしれない。



「ありがとうございますわ。殿下」


「これからは私のことは、父上と呼べばいい」

クレオは優しく、ロレーヌの頭から髪をなでる。

いつくしむような優しい手に、ロレーヌはうっとりする。


「はい」

クレオの方が年下なのに少し恥ずかしいと、ロレーヌが顔を赤らめて微笑んだ。


「ロレーヌ。もしお前に恋人が、好きな人間ができたら、私にすぐに言ってほしい。娘はすぐに恋人の存在を、親に報告するものだろう?」


「そうなのですか?」


にっこりクレオは微笑んだ。

「ああ、もちろん、そうだ」


部屋にノックがして、「クレオ様」と執事の声が聞こえてくる。クレオはため息をつくと、「今行く」と声を上げる。


「ロレーヌ。では、また」

クレオはロレーヌの手と頬に口づけると、去っていった。


今度クッキーでもクレオ殿下に送ろうかなと、ロレーヌはそんなことを考えながら、鼻歌を歌った。

けれどもシャパードのことを思い出し、ロレーヌは深い自身の喪失感を思い出す。想像以上に、シャパードという存在は、ロレーヌにとって大きくなっていたらしい。


イールもシャパードになんだかんだ言って懐いていたし、寂しくなるなと、ロレーヌはぎゅっと、自身の胸の所の衣服を握り微笑んだ。


それからロレーヌのもとからシャパードが去り、ロレーヌのもとに二人の騎士がやってきた。


シャパードが去ることになった前の日に、ロレーヌのもとにシャパードがやってきた。

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