第13話


その日クレオ殿下は、ロレーヌの元に訪ねてきた。


クレオとロレーヌは、一緒にお茶をしていたのだが・・・。クレオ殿下は、シャパードを首にすると言い出した。


シャパードは首になってしまうのだろうか?

ロレーヌの心の奥に、深い喪失感が広がる。

この気持ちは、父のような存在をなくしてしまうような喪失感に似ている。


「ロレーヌ、お前はシャパードのことが好きなのか?」


「シャパードがやめてしまったら、とても寂しいですわ。シャパードはよく働いてくれてましたし、その、まるで私の父親のように思っていましたから」


なんだか恥ずかしくて、ロレーヌは顔を赤くしながら微笑む。

子供でもないのに、父親を求めてしまった。

もちろん異性へのときめきもあったのだが・・・・。


「父親?」


「その、あまり家族と父とお話しできなかったものですから、つい、シャパードのことを父のように思ってしまいましたの」


「ロレーヌ」

クレオに静かに名前を呼ばれ、「はい」と気恥ずかしそうに微笑んでいるロレーヌ。


クレオは手を伸ばして、ロレーヌの頬に触れて、手の上に手を重ねた。


「ロレーヌ。私が、お前の父になろう」


「まぁ。私の父に?」


「私では役不足かもしれないが。私ならば、お前の望みならなんでも叶えてやれる。・・・いいだろうか?」


「あら。そんな、いいんですの?」


「もちろんだ。お前こそ、私でいいのか?」


「はい」

にこにこ嬉しそうにロレーヌは微笑んだ。クレオはロレーヌの手を握って微笑んだ。


「お父様みたいな存在ができるのは、嬉しいですわ。クレオお父様ですわね」


「ああ」


「そうだわ。シャパードは、首になってしまいますの?私によくしてくださいましたのに」


「大丈夫。私はロレーヌのためならば何でもしよう。シャパードは首と言ったが、配置換えで、また私の護衛をしてもらうことにしている」


「よかった」


相変わらず殿下は優しい。だけれど握っている手が少しだけ、強くて痛かった。

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