第8話
「あの、どういうことかしら?」
急に妹の子を見ろと言われても、困ったロレーヌである。
「母様、僕のこといらないんだ。もう」
悲し気にそんなことを言い出す可愛らしいふくふくほっぺの幼い子供のイールに、ロレーヌは同情してしまう。
ロレーヌはにこにこ微笑みながら、イールの頭をなでた。
「まぁいいわ。今日はたくさんお菓子を焼きましょう。冷やしておいた美味しいプリンもあるの。あなた達もゆっくりしていきなさいな」
もぐもぐ美味しそうに、プリンを食べているイール。ものといたげな侍女シャーロットの視線が、ロレーヌに突き刺さる。
「ロレーヌ様、話は聞いておりましたが、どうなさるおつもりですか?」
こそこそシャーロットが、ロレーヌの耳元で囁く。
「この子も放っておけないし、殿下に相談してみるわ。何とかして殿下に連絡取れないかしら?ずっと殿下に会っていないし、分からないのよ」
そういえば、ロレーヌからクレオ殿下に会いに行ったことはない。
「お任せください。私が殿下に報告しておきます」
「ありがとう、シャーロット、よろしくお願いします」
家庭の事情に、シャーロットを巻き込んでしまった形に、ロレーヌは申し訳なく思うのであった。
「ロレーヌ様はお優しすぎます」
そうシャーロットは言うが、別にロレーヌは優しいわけではない。ただ微笑んでいるだけで・・。
「失礼します。ロレーヌ様」
部屋のノックとともに、また違う見慣れた顔の侍女が慌てた様子で、室内に入ってくる。
「どうかしたの?」
「第二王子のアレクさまが、お越しになってます」
「あらあら、まぁまぁ」
どうしてまたこのタイミングに・・・。
「庭に案内して、お茶のセッティングしてくださる?今室内に親戚の子が来ているの」
にっこりロレーヌは微笑んだ。
侍女は真っ青な顔で何度もうなずいて、慌てて部屋を出ていく。
「さて、行きましょうか?」
ゆったり立ち上がるロレーヌの手をシャーパードは握り、跪いてゆっくり口づけた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます