光を求めて、いざ洞窟へ!

 ライガーの背にしがみつき、風が耳元を切り裂いていく。ライガーは驚くほどの速さで森の中を駆け抜け、木々の影が瞬く間に通り過ぎる。振り返る暇もなく、目の前には次々と枝や岩が迫ってきたが、ライガーの滑らかな動きで全てをすり抜けていく。


 体が上下に揺れる感覚に、思わず息を飲む。背中に乗っているミスズやホウトウは大丈夫だろうかと一瞬気になり、ちらりと後ろを確認する。ホウトウはしっかりとしがみつき、驚きながらも何とかバランスを保っているようだ。ミスズも食料の袋をしっかり抱え、振動にも負けずにライガーの背に座っている。ローランドもまた無表情で、まるでライガーと一体化したかのように、安定した姿勢を崩していない。


「すごい……!」


 思わず心の中で呟く。ライガーの筋肉が力強く動くたび、まるで風そのものになったかのようなスピードで進んでいく。森の葉がかすめ、草が舞い上がる。ライガーが加速するたびに、心臓の鼓動が速まる。


 まばゆい光が木々の間から差し込み、ライガーがその光の中をまっすぐに駆け抜ける。目的地はまだ先だが、この速さならあっという間に辿り着くだろう。空気が肌を切るように冷たく、頬を叩いていくが、その疾走感と快適さの俺は小さく微笑んでいた。


 やはり、ライガーの背中は疾走感がたまらないな。森をスイスイと駆け抜けるし、このモフモフの毛皮が何ともいえず心地いい。このまま背中で寝落ちできそうだな。


「ガイ様、もう少しで洞窟に到着しますぞ」

 後ろでホウトウが叫んでいる。俺は振り向いて、頷いたあと、しばらくライガーの背中を堪能した。2日かかると言われた距離を、すでに残り僅かというところまで突き進むとはライガーの足には正直脱帽だな。


「ガイ様、見えました。洞窟の入り口です」

 ミスズは洞窟の入り口を指さす。木の葉に隠れて、遠くからは見づらいが確かにそこには洞窟の入り口が見えた。近づくにつれて、はっきりと見えてきたぞ。人が同時に入れるのは4人ぐらいか? そんなに大きな入り口ではなさそう。ここ何年も誰も出入りしていないからか、周りには木が岩肌に一体化するかのように生い茂っている。


「ホウトウ、ここがそうなのか?」

「そうですな……しかし、中は非常に暗く、このままでは進むのもままならないですな……さて、どうしたものか」

 ホウトウは髭を撫でおろしながら、思考を張り巡らし、現状を打開する策を考えているようだが……表情を変えないまま、しばらく硬直している。考えがまとまらないんだな。


「中を照らす何かを作れればいいですけど……」

 ミスズの言葉で俺は閃いた。暗い中を照らす方法、それはランプだ。創造してランプを作れば中に入れるかもしれない。


「ホウトウ! 今からランプを作ろうと思うんだけど、ランプの設計頼める?」

「なるほど……その手がありましたな。かしこまりました、ランプを作るためガイ様には必要な物を創造していただく必要がありますがよろしいかな?」

「問題ない、ミスズ、悪いけど近くで油の代わりになりそうなもの探してきてくれる?」

「かしこまりました、すぐに探してまいります」

 そういってミスズはライガーと共に近くを散策し始めた。俺はホウトウの指示通り、必要な部品を創造していく。ホウトウはなるべく俺に負担がかからないよう、部品を簡単にしてくれた。ホウトウは本当に手先が器用なようで、部品を次々と組みたてていく。そして、あっという間にランプの形に出来上がった。


「凄いな、さすがホウトウ」

「ほーほっほ、そうでもございません。他愛もないわしの取柄ですから」

「ガイ様、こちらでよろしいでしょうか?」

 ミスズが手に何かを持って戻ってきた。


「これは、『油草』ですな。絞れば植物性油が捻出されるものです。しっかりランプを灯す燃料になるでしょう」

「そうか、ミスズ、ホウトウありがとう、あとは火をつけるだけなんだけど……」

 俺たちはある人物に視線を送った。火をつけるのは正直力仕事、それに適しているのはたった1人……ローランドの出番だ。


「……自分はこういうことは苦手で……」

 視線に気づいたローランドは口元を隠しながら言葉を濁した。俺たちはローランドをライガーの背中からひきずり降ろし、無理やり火を起こさせた。苦手だと言ってたくせに、火をつける準備ができると、物凄いスピードで棒を回転させ、火種が完成させた。俺は火種をランプに入れると、温かい光がフワァっと広がり、洞窟に入る準備ができた。


「よし、これで洞窟の中に入れるな、ミスズ、ライガー達に食べ物を渡してから中に入ろうか」

「かしこまりました、ですが……」

「ん?」

 俺はミスズが持ってきた袋に視線を向けると、そこにはライガー達が食料袋から食べ物を漁っている姿があった。ったく、現金な奴らだな―――

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