新しい食材を求めて

 4人のゴーレムを創造して1週間ほどが経過していた。4人がいる生活にも慣れ、俺は平穏な日々を過ごしている。俺は必要な時以外は極力、魔法を使って創造しないようにし、ゴーレムに任せるようにした。


 ミスズは畑で野菜をつくり、俺の身の回りの世話。

 ホウトウは何かあると助言をして、俺を陰から支えてくれる。

 ローランドは常に俺のそばを離れない。

 レイチェルは変わらず、森に消えて何かをしているようだ。まったく、文句を言わずに働いてくれるなんて、優秀なゴーレムたちだな。こうやってテーブルで待っていたら、ミスズがご飯を作ってくれるし。


「お待たせしました、ジャガイモのホイル焼きです」

 ミスズはレイチェルに料理を教わり、土料理じゃなくなった。それだけで物凄く俺としてはありがたい……だけど。


「ん~、ねぇ、ミスズそろそろ別の料理が食べたいんだけど」

「そうですね、ですが、現在畑で育ててるのはイモとか野菜ですし、野菜中心の生活にはどうしてもなってしまいますね」

 やっぱりそうだよな。仕方がない、こうなったら新しい食材を探すとするか。そういえばヒスイの森は昔、鉱石が潤沢にあるって長老が言ってたよな。モンスターが出て、いけなくなったって言ってたし。


「ねぇ、ミスズ、ホウトウを呼んできてくれる?」

「かしこまりました。すぐに呼んでまいります」

 ミスズは頭を下げた後、ホウトウを呼びに外に向かった。ホウトウならこの

森の奥になにがあるか知っているだろう。しばらくするとホウトウが小鳥を肩に乗せてやってきた。


「ほーほっほ、ガイ様、お呼びでしょうか?」

「うん、ねぇこの森の奥にさ、なにか食材になりそうなものとかない? ほらこの森は鉱石が潤沢にあるでしょ、例えばその付近を縄張りにしてるモンスターとかが食べてる食材とか」

 ホウトウは髭を撫でながら考えている。


「確かに、森の奥には洞窟が存在しますな。鉱石を食べるヒカリトカゲ、塩や胡椒と同じ成分を持つ、塩キノコ、黒胡椒石が採取できるでしょう」

「おぉ~!! いいじゃん! 今すぐに行こう!」

 ホウトウの情報が正しければ、俺は肉も食べれるようになるし、塩コショウで味付けも可能になる。ずっと素材の味しか楽しめなかったからな。俺は立ち上がり、さっそく出発の準備を始めた。


「ですが……」

「ん? 何か問題? モンスターなら大丈夫だよ、俺がどうにかするし」

「いえ、モンスターもそうですが、距離がとても……」

「どのくらい?」

「2日ほどですな……」

 2日!? 往復したら4日もかかるのか……。それは大変だな。道は開拓されてないだろうし、整備されてない道をスムーズに行ける手段も今のところない。待てよ……、ライガーなら道なき道を行けるんじゃないか?


「ねぇ、ミスズ、今日もライガー達に食材あげるの?」

「勿論、そろそろライガー達が来るので、そのつもりですが、どうされるのですか?」

「ライガー達の背中に乗ってその洞窟まで向かおう、それならだいぶ早くたどり着けるんじゃない?」

「さすがガイ様、それはいいアイデアですな。では早速、そのように」

 ホウトウは軽く頭を下げて、ミスズと共に外に向かった。よし、俺も外に出るか。準備をして、外に出たところで、扉の横にローランドが立っていた。


「ガイ様……お供いたします」

「ローランド、ありがとう。ずっとそばにいるけどローランドは何もしなくていいの?」

 ずっとそばにいてくれているローランドは、何もせずに立っていてくれるけど、大丈夫かな? 俺が気にして声を掛けると、ローランドは表情を変えることなく答えた。


「……自分は、ガイ様をお守りするために生まれたゴーレムです。これでしか自分の価値を見出すことはできません。不器用ですから」

「そう……か。じゃあ、よろしく頼むよ」

「……承知しました」

 俺が前を歩くと、その後ろをひよこのようにローランドはついて来る。外にはミスズとホウトウがライガー達に噛まれながら、なんとか躾けようとしていた。


「……何してんの?」

「なんとか背中に乗ろうとするのですが、どうやら乗せてはくれないようで……」

 俺が近づいていくと、1匹のライガーがトコトコとやってきた。あの時のライガーだ。俺はライガーの体に優しく触れると、ライガーは背中に乗れるよう、腰を低くしてくれた。


「乗れるじゃんか、なぁ、こいつらも一緒に乗せてもらえないかな?」

「ウゥゥ、ワン!!!!!」

 俺の言葉が通じたのか、数匹のライガーが腰を低くしたことで、ミスズ達は背中に乗ることができた。


「さすがガイ様、ライガーが心を開くとは、それでこそ我等が主」

「よし、ホウトウ、案内を頼む! ミスズ、ライガー達のために食料を多めに持っていってやってくれ、ローランド行くぞ!」

 こうして、俺たちはヒスイの森の奥にある洞窟に向かった―――



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