四柱、ここに集結!

 俺の”足”となるゴーレムは、機動力が最重要だ。身体を構築する素材も土じゃなく、軽くて丈夫なチタンとアルミニウムで骨格を形成しよう、イメージは黒ずくめの女スパイか? 名前は……そうだな、レイチェルにしよう。武器は二丁拳銃にして、スラっとしたモデル体型……。あとはイメージを崩さず創造していくだけだ―――


 こうして完成したレイチェルは、黒ずくめでスラっと背の高いモデル体型をした女性に変貌を遂げた。髪の毛はブロンズ、胸元まである長い髪はとてもゴーレムとは思えない。さて、レイチェルはまともでいてくれよ……。


「レイチェル、お前は俺の”足”として世界を駆けまわってくれ!」

 レイチェルは静かに目を開ける。その眼はゾッとするぐらい冷たく、まるで死んだ魚の目をしている。俺、そんな変なこと言ったかな?


「口を閉じろ、この虫ケラが……」

「……っえ?」

 俺は思いがけない返事に思わず言葉を失った。今、虫ケラって言ったよね? 聞き間違いじゃないよね? ズカズカと俺に詰め寄り、顔を勢いよく近づけてきた。


「ウチは男の言う事は聞かねぇんだ、わかったらそのくせぇ口を閉じろ!」

 ……失敗したな、これは。こんな奴が俺の”足”になるわけないもん。4体のゴーレムの内1体も俺の思い通りにならなかったな、なったのは外見だけか……。俺が落胆した表情をしていると、ミスズがレイチェルを叱責し始めた。


「レイチェルさん、ダメですよ。ガイ様の言うとおりにしてください。私達はガイ様に創造していただいたことでここにいることを忘れないように」

「はぁぁぁぁい♡」

 レイチェルは甲高い声をあげながらミスズに抱きついた。顔をスリスリしているが、もしかして……。


「ミスズのいう事なら、聞いてあ・げ・るぅぅぅぅ!!!!! 可愛いぃぃぃ!」

「レイチェルさん、これでは畑にいけません、離してください」

 やっぱり、ミスズには心を許してるみたいだな。しかし……よくこの状態で、冷静にいられるな。


「これこれ、レイチェルよ、そう興奮されるな。我が主の前でみっともない」

「黙れぇぇ! このクソじじぃがぁぁ! 男が話しかけてんじゃねぇぞ!」

 おぉ、凄いブチギレてるじゃん。え、なんかあったん? 今、俺が創造したはずなんだけど……。まぁ、仕方ない。この4人と上手くやっていくしかないか。俺はその場を抑えるため、4人を並べた。


「いいか、ミスズ、ホウトウ、ローランド、レイチェル、お前たち4人はこれから俺の支柱として動いてもらう。魔王が復活するかもしれないって言われてるけど、俺は迫害されて『ゆっくりとこの世界で暮らす』ことを決めた。お前たちにはその支えとなって欲しい、頼りにしてるからな!」

 俺は自身の目的を4人に伝えた。ゴーレムだから大丈夫だと思うけど、せっかくだからそれっぽくしたかった。忠誠を誓った4人……なんかカッコいいしな。最初に声をあげたのはミスズ、両手を体の前で組み、綺麗にお辞儀をした。


ください、ガイ様をお守りするため、身の回りのことは全てこのミスズにお任せください」

 だから、ご安心な。何回間違えたら気が済むんだよ。


「ほーほっほ、このホウトウ。ガイ様の”頭”となり知恵を尽きることなく捧げましょう」

 おぉ、さすが老人ゴーレム。しっかりとしてる……。


「イッツ、エンジョイですぞ」

 うん、前言撤回だわ。グッドじゃねぇから。満面の笑みなのがわかるぐらい口角上がってるし。


「グディルババルガ、ドドルンバデガル」

 ローランドは相変わらず何を言ってるかわからない。とりあえずあとでホウトウに訳してもらおう。


「チッ」

 レイチェル、お前だけなんか違うからな! すげぇ嫌そうな顔してるけどさ。ここは嘘でもなんか言ってくれよ!


「……まぁ、いいか」

 一応、俺の伝えたいことは伝えたし、4人にも伝わってるはず。……1人だけ怪しいけど。軽くため息をつくと、いつもの目まいが襲ってくる。また来たか、さすがに4人のゴーレムを創造するのは無茶だったか? 俺がクラっとして倒れそうになると、ミスズが支えてくれた。


「ガイ様……先程、迫害をされたと言われましたが、訂正をしてください。村の者はガイ様を慕い、ライガー達はガイ様の優しさによって心を開いておられます。迫害などされておられません、ですので今は、しっかりとお休みください」

 ミスズの優しく透き通る声がスゥっと脳に響き、なぜかは分からないけど、ホッと安心した自分がいた……。あぁ、俺、頑張ってたんだな……。次の瞬間、まるでこと切れた人形のように俺は意識を失った―――

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