4人の支柱の1人

 ―――チュン、チュン


 鳥のさえずりが聞こえ、意識がはっきりとしてきた。次第に光を感じることもできるようになり、俺は静かに目を開いた。昨日の疲労がまるで嘘のように回復し、頭がすっきりとしている。


「ふぅ、もう朝か……」

 ゴーレムたち、さすがに種は全部植え終えただろうか? 俺は気になって家の外に出た。そこにはすでに種を植え終えたゴーレムたちが、横一列に綺麗に並んでいた。


「うおぉ!? こわっ」

 ゴーレム4体……さすがに迫力があるな。ずっと働いてくれてたのか……。しかし、動かないところをみると指示を与えない限りは行動しないようだな。


「よし、お前! ちょっとこれに水を汲んできてくれるか?」

 ここで問題が発生、4体のゴーレムが同時に動いて俺が持ってきたコップを取ろうとする。お前だと全員動くのか……、固有名詞みたいなのが必要なのか? 例えばゴーレムAとかゴーレムBみたいに、名付ければいけるのかな?


「いや、それじゃさすがに俺も分からなくなるぞ?」

 ただでさえ見た目はほとんど同じ、頭も使わないといけなくなるのに見分けなんてつくはずがないしな……よし、固有名詞をつけれるよう、見た目や恰好を変化させようか、せっかくだし俺の側近として働いてもらおう。


 俺は4体のゴーレムにそれぞれ役割を与えることにした。1体は俺の”矛”となり敵を率先して倒す戦闘タイプのゴーレムだ。矛だけじゃダメだから”盾”も創造する。俺を傍で守るゴーレム、この2体がこれから俺の代わりに戦ってくれるゴーレムだ。この世界じゃいつモンスターに襲われるかわからないからな。それに、世界の情報をよく知る”頭”が必要になる。1体は俺の頭脳となり、支えてくれるゴーレムにしよう。最後は俺の”足”だ、スパイや工作、フォルティア王国の動きを逐一報告してくれる影となる存在……。


 俺の手足となり頭脳となる4体とはこれから長い付き合いになりそうだ。


「ちょっと、お前たち、家の中で待っててくれ」

 ゴーレムたちは家の中にのそのそと入っていく。そして、1体のゴーレムの手を掴んだ。


「今からお前を創造しなおす、まずは”矛”として俺の敵を倒してもらうからな」

 俺は手を掴んだまま、創造を始めた。まずは人間に限りなく近いのがいいな……朝起きてゴーレムがいたらびっくりするし。動きに無駄がでないよう、手足はスラっとさせて、俺の世話をしてもらうから女性型のゴーレムにしようか。メイド姿とかいいかも? 名前はそうだな……俺は女優の広瀬みすずが好きだから、【ミスズ】に決定で。


 俺が創造を続けることおよそ10分ほど、次第にゴーレムは俺の創造する女性型のゴーレムに少しずつ変化していく―――


「できた……」

 家の中にこぼれる大粒の太陽の光、その光に照らされながらミスズは、あまりに人間に限りなく近い形をしており、ゴーレムとはだれが見ても思わない。一瞬本物の女性かと見間違えるほどだ。目を瞑ってはいるが、呼吸をしているのかと思う程、髪の毛の揺れや、呼吸の仕方が人間にそっくりだ。まじまじと眺めていると、ミスズが静かに目を開く。瞳は澄んだ白色の目をしていて、俺は一瞬驚いた。


「急に目を開けるなよ! なぁ、お前は今日からミスズだ、分かったか?」

「……かしこまりました」

 !!!!! 喋った!? 今、ゴーレムなのに会話をしたぞ、どうして?


「えっ? 話せるの?」

「はい、私はガイ様の頭の中で創造されたゴーレムですから、ガイ様が記憶する限りのほとんどを把握しております、勿論ガイ様が自覚していない、ガイ様自身の事についても」

「自覚していないこと? 例えば俺の魔法のこととか?」

「はい、そうですね、ガイ様の記憶する”日本”で言えば私は、人工AIとでも呼んだ方がしっくりくるかと」

 あぁ、しっくり来たわ。AIはディープラーニングとかいう技術があったようななかったような……。つまり『分かったか?』の問いに対して、返答するには言語が必要だと判断して、ミスズはアップデートしたって感じね、わかりやすい。


「オッケ、とりあえずそう言う事にしておこう、後で詳しい話を聞かせてよ、俺にもわからないことがあるからさ」

「かしこまりました、それでは私は畑にできた食料を採ってまいります」

 ミスズは頭を下げて、家の外に出ていく。ゴーレムだった時と違い、動きはかなりスムーズだ、というより人間の動きに限りなく近い。心配事があるとすれば……。


「ガイ様、大変です。畑に水やりをした水が私の身体に染みこんで動けなくなりました。助けてください」

 俺の苦労が増えたかもしれないってことだな―――

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