創造の力、尽きるまで―――
村での用事を済ませ、俺は大量の荷物を運べるだけの荷車を創造した。荷台にこれでもかという程、荷物を乗せるとギシギシと音を立てる。土で作ってたら壊れていただろうな、鉄が創造できるなら鉱石と似た性質を持つ金属も創造できると思って”チタン”にしたのが正解だった。そして魔力を動力源とする車体を取り付けた。
荷台を紐で固定して、後は森に帰るだけだ。フロイドたちに挨拶をした後、俺は車体に乗り、発進した。デコボコだった道は綺麗で整備された道に変わっているから振動も少なくて実に快適だ。1人で移動していた台車より移動もスムーズだし、サツマイモの様子も気になる、少し魔力の出力を上げるとするか。
森の中は相変わらず薄暗い、だが心なしか光の差し込む量が多いような気がする。服にまとわりつく湿気もあまり感じない、道を作ったからかな? それに道が綺麗なおかげで、2時間以上かかっていた道のりも数十分まで短縮できている。
「いやぁ、快適、快適っと……お?」
家に到着すると、出る前に植えたサツマイモに変化があったようだ。やはり俺が創造した土で育てたサツマイモはすでに実を作り、食べれる状態にあるのに、そうじゃない土で育てていた方はまだ実を出していない。という事は俺が創造した土には何かしら影響が出ると考える方が良さそうだな。
「この辺りを土で耕して、育ててれば、もうゆっくりと暮らせる?」
そうと決まれば、話しは早い。家の周り畑に大きく変えて、次々と育てていこう。しかし、そうなると今度は別の問題が発生する。
「これを全部植えたりするのは大変だな」
家の周りを畑にするといっても50mプール2個分ぐらいの敷地だ。規模を縮小すればいいだけなんだが、せっかく魔力は無限なんだ、大きく創るに越したことは無い。だが1人でこれを全部植えるのも大変……労働力が欲しいな。村の人に頼むか? いや、それはちょっとな……。ライガーがいつここに来るかわからないのにお願いはできないか。
「創造してどうにかできないかな?」
俺は今自分にできることを軽く整理した。まずは簡単な形、四角や丸は容易に創造できる。それを大きくすることも可能で、土を性質変化させることができることも分かった。他にも魔力を動力源とした乗り物を創造することもできる……。なるほど魔力を動力源か。
「人型の何かを創造すれば……」
土に関連する人型……ゴーレムか? 丸い円柱をいくつか創造して、関節は球で補えばなんとかいけるかもしれない。待って、本当にできるかも!?
「……よぉし!」
これが成功すれば俺は無尽蔵に働く労働力を得たも同然、気合が入るぞ。目を瞑って集中する。大きさは人ぐらい、顔や腕、足と胴体は円柱でそれぞれの大きさは部位によって変化、雨が降っても大丈夫なよう珪藻土の土で作ってやろう。関節は肘や膝は少し大きめの球体、指とか小さい関節は小さめの球体。漫画家さんがよく使用するデッサン人形を創造すればイメージしやすいな。最後は魔力で動く動力炉を心臓部に創造すれば……!
「―――完成だ、やったぁ!」
できたゴーレムの見た目は、いかにもモンスターらしい見た目をしている。さて、問題は動くかいなかだが……。
ギッ……ギィ
体をギシギシと音を立てながら腕を動かした。よし、成功だ!
「よし、ゴーレム! 畑に種を植えてくれ!」
俺の声に反応して、不器用な動きながら畑に種を植え始めた。しかし、動きが随分と遅い、というかぎこちない動きだ。これじゃ、時間がかかりすぎる。もう3体程、ゴーレムを創造しないとダメかな?
「頭がふらつく……少し休んだ方がいいかもしれない。でも、もう少しだけ……」
俺はもう少し気張って、さらに3体のゴーレムを創造した。それぞれちょっとだけ形や大きさが違うな、やはり俺の思考がおぼつかなくなってきている、家のベッドで休もうかな。
「お前たち、俺はしばらく休むから、畑に種を植えといてね」
ゴーレムたちはゆっくりと動きながら畑を耕し始める。おそらく俺が上司だったら最悪だよな、指示するだけして自分は何もしないんだから。でも、ゴーレムには疲労とかそういうのはないから別にいいか。
「やばい……ちょっと今日は頭を使い過ぎたかも……」
道を作って、鍬を作って、巨大な荷台と車体を創造して、ゴーレムまで作ったんだ。こんなに創造したのは初めてかも……。視界がはっきりしなくなってる、待って……本当に……やばい……意識が遠のいていく―――
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