対価の報酬
俺は運動があまり得意じゃない、家で引きこもってゲームするのが好きだし、絵を書いたりする方が性に合ってる、別に陰キャというわけではないが陽キャでは決してない。いわゆる普通の人間、そんな平凡な俺が体育会系の陽キャ野郎の火野と異世界で戦いになるとはな……。
とはいえ殴り合いができるほど俺は腕力があるわけじゃない、反射神経がいいわけでもないから、火野の拳を避けようと上体をスウェイしてみたが無駄だった。火野の動体視力が良かったのか動きを合わせられ拳は綺麗に顔面にクリーンヒットし、鼻から血が出てしまった。
俺は勢いよく吹っ飛び、何とか受け身はとれたものの、奴らは俺を格下と見たのかゲラゲラと笑い始めた。ほっといてくれれば何もしないでやったのに、俺は腕で鼻血を拭った。
「ほらな、大したことねぇだろ?」
「おい、俺にもやらしてくれよ」
今度は風間か、相手が弱いと見た瞬間に調子に乗ってんのはどっちだ。俺は鼻をすすり、鋭く睨んだ。一瞬で終わらせてやる……。
「いい加減にしろ、お前ら全員消えていなくなれ! ”メテオストライク”」
怒りに任せて俺は頭の中で無数の隕石を創造した、一瞬にして空を覆う程に隕石が3人めがけて降り注いだ。
「なっ!?」
「い、隕石!?」
「嘘……」
地平線まで響く程の轟音と衝撃波、隕石は3人はおろか、黄色の魔法使い跡地をも粉々に吹き飛ばしてしまった。火野は圧倒的な俺の力の前に口をパクパクとさせ、風間は腰が抜けたのか生まれたての小鹿みたいになってやがる、水谷は……ふっ、その場でお漏らしか。
「いいか、二度と俺に近づくな! 魔王を倒すのはお前らに任せる。俺は俺の好きにさせてもらう。もう俺の前に現れるな!」
「ひぃぃぃぃ~!!!!!」
3人は尻尾を巻くようにその場から立ち去った。大したことは無かったな、いや、無限の腕輪が強すぎるだけか。
周りを見渡すと、隕石のせいで地形は見るも無残な有様になっていた。黄色の魔法使い跡地は、もはや面影すらない。まぁ、元々土で作られた家だし、問題はないだろうが、それにしても凄まじいな……。怒りで我を忘れていたせいか、隕石の形はどれもバラバラ。中にはビー玉サイズの隕石まである。思考が乱れるとこういうことになるんだな。次からは気を付けないと。
「奴らがまたここへ来るかもしれないな……」
おそらくこのことはあの王様の耳にすぐに入るだろう、あの3人は昔のいじめっ子みたいに『自分たちが被害に遭った』って被害者ヅラしながら王様に報告するんだろうな。そうなればここに大量の兵士かもしくはまた別の何かが来るかもしれない、そうなる前にここを離れよう。
と、なると移動手段が必要だ。日本で言えば車かバイクか? とはいえ、今の俺には複雑な乗り物なんて創造できないしな……。机を使って何か応用は利かせられるか?
目を閉じて、頭に移動がスムーズにできる乗り物を創造する。まずは俺が乗れる大きさが必要だ。机の台を形成し、机の脚の部分を車輪に変えて……そうだな、ちょっと大きめの車輪を創造しよう。あとは動力だ。勝手に動いてくれないと意味がないし、幸い魔力は無限だ。魔力を動力にした台車なら、無理なく創造できそうだな……。
こうして創造した台車は形は不格好だがなんとか乗り物としては機能しそうだ。よし、とりあえずこれに乗ってここを離れ……ん?
「なんだ、この袋……」
3人がいた場所に落ちていたようだが、なんだろう? 俺は袋を拾い上げた。大きなものが入っているわけではなさそうだが、上下に振るとジャラジャラと金属音がする。これはもしかして……。袋の中を覗くと、金貨が10枚入っていた。ありがたく頂戴しておこう。お腹も減ってきたしな。
「さて、まずは腹ごしらえと情報収集だな!」
俺は台車の上に乗り、魔力を消費して車輪を動かした。とりあえず道に沿って移動すればどこかに行きつくだろう、村でも街でもなんでもいい、なるべく早く着けるといいんだけど。
……
………
「この台車クッソ遅いな!」
道も日本みたいに整備されてないからガタガタしてるし、振動が直接俺に伝わってくる。これスピード上げたら頭がおかしくなるかもな。この世界で台車の移動は失敗かも知れないな―――
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