初めて作ったのは
メチャクチャ小さいぞこの机! 座れないし、作業もできない。なるほど、頭に描くだけだとダメなんだな。大きさまで創造する必要があるな。
俺は再度、頭に机を創造した。今度は失敗しないよう、細部にこだわっていくぞ。大きさは4人掛けのテーブルがいいな、椅子もつけたいから高さも出そうか、角はぶつけると危ないから削って丸くしよう。強度は多少の衝撃じゃビクともしないぐらいで。腰の高さぐらいまで地面が盛り上がっていき、次第に形が成形されていく。
「できた……!」
我ながら見事な出来栄え、大きさも形も問題ない、強度は……だいぶ強い、良い感じだ。
この調子で椅子も作ろうか、そうだな、椅子は背もたれが欲しいな、少し反りを加えて、大きさは机の下に収まるほどにしよう。
2回目だからか割とスムーズに創造できたな。思った通りに作れたぞ。さて、ここからどうしようか、せっかくだから座ってゆっくりと考えよう。
「……」
なんだろうこの椅子、めっちゃ固い。あ、そうか土で作ってるからか。なんかコンクリートに座ってるみたいだな、どうにかできないかな……。もしかして性質も変えることできたり? ちょっとやってみようか。
俺は作った椅子に手を掲げ、意識を集中した。性質を土から粘土へ―――
―――座ってみたが、椅子はものの見事にぶっ壊れた。そりゃそうか、粘土だもん。ふにゃってなって形崩れるよね。でも性質を変えることができることは分かった、これはかなりの進展だな。
「ってことは、座る部分を粘土の性質にして、他を強度の高い土に変えたらいけるのか?」
難易度がいきなり跳ね上がったが、これができれば他にも応用が利きそうだな。目を閉じないと集中できないのが問題だが、今はそれほど気にすることではない、工程は変えず、性質を2つに分ける……。
創造した椅子は見た目はほとんど変わらない、変わっているのは座る部分をクッションの代わりをする粘土に変更したこと、ゆっくりと座ってみる。粘土のふわっとした感触が俺の尻を包み込んだ。さっきまでとは比べ物にならないほど座り心地が良くなっている。成功だな!
「なんか、ちょっと疲れてきたな……」
頭をだいぶ使ったからか、疲労が押し寄せてきている。魔力は無限でも、体力は無限ではないか……。いろいろとわかってきたぞ、これは土属性の魔法と無限の腕輪についてもう少し知る必要があるな。とはいえ、眠たい……、ちょっとだけ休憩しよう、まだお腹も減ってないし、少しだけ……―――
―――ザッ、ザッ、ザッ
外で足音が聞こえて目が覚めた。誰かがこの家に近づいてる? それも1人じゃないな、2人……いや、3人か。ここに何の用だろうか?
「あ、ポンコツ発見!」
「おい、何やってんだお前!」
「黄色の魔法使いはやることも下劣なんですね」
俺と一緒に転生してきた3人が家に入り込んできた。確か火野晃一と風間研三、そして水谷流二か……なんだよ、別に会いたくなかったのに。
「……なんだよ、ここに何の用だ? それに黄色の魔法使いって一体なんのことだ」
俺は椅子から立ち上がった。こいつらと少しでも一緒の空間にいたくないという本能みたいなのがそうさせたのか、俺は無意識に警戒していた。
「そうか、お前途中で国を追い出されたから話を聞いてないんだもんな」
「話?」
「この世界は4人の魔法使いが作ったとされてるんだってさ、
情熱と破壊を司る”赤の魔法使い”、
冷静で支配を好む”青の魔法使い”、
自由に自然と暮らす”緑の魔法使い”、
そして創造し秩序を保つ”黄色の魔法使い”さ」
「ですが、ある日を境に黄色の魔法使いは3人と決別したそうです、そして黄色の魔法使いが生涯を過ごしたのがこの場所だそうですよ」
なるほど、それでこの場所の名前が黄色の魔法使い跡地だったわけだ。
「それと、僕たちはその魔法使い達の能力を色濃く引き継いでいるそうです。何の因果かその人たちと同じ境遇になってますけどね」
「仕方ねぇよ、だってどう見たって弱そうじゃん」
「この世界はさ俺たちで救うからさ、お前もうどっかにいなくなれよ」
なんでそうなる。別に世界がどうなろうともう俺の知る由じゃないんだ、お前らこそどっかにいってくれ、邪魔だから。
「断る、ここには俺が先にいたんだ、お前たちがどっかに行ってくれよ」
「はぁ? コイツいっちょ前にいきってやがる」
「どうせ、何もできないポンコツやろうがよ!」
突然火野が殴りかかってきた。手にはメラメラと燃える炎を宿している。なるほど、コイツは接近戦なわけか、だがここで時間を食うわけにはいかない、一気に蹴りを着ける。さっきの創造の要領だ、そうだなビビらすには巨大な石がいいか。ただ創造するだけじゃダメだ……そうだ隕石にしよう。
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