第6話

「それでは実技試験を始める」

試験官の言葉とともに始まる試験。

それぞれが各自の部屋に順に入っていく。

僕も自分に割り当てられた部屋に入っていく。

おそらく中にいるのはランダムに選ばれた魔物。

それは入ったものの強さに合わせられたモンスターが選び出される。

それは入ったものの全員の強さを値に応じたモンスターが選び出される。

普段和葉がこの試験に挑む際には芽愛は家にお留守番させていたが今回は連れてきている。

ならば結果はお分かりいただけるだろう。

「なんじゃここは現世か?」

「ッ!鬼!?」

出てきたのは女の姿をした鬼。それはとても美しくも恐ろしい。

禍々しい気を発しており額に生えた角は立派で高位の鬼であることがわかる。

そして現世という発言。それは地獄に存在する鬼だということがわかる。

鬼は基本的に人類を超越している。

それは魔力量、身体能力、再生能力、知覚能力と多岐にわたる。

鬼の討伐例は数多くあるがそのほとんどが下位の鬼。

高位の鬼ともなれば討伐例よりも逃げられた例の方が多い。

鬼が満足し帰っていくまでひたすらしのぐしかないのだ。

ゆえに災害認定されている最強格の一部。

「なんで鬼がこんなところに...」

一部の鬼は人と共存する。

天皇家につかえたとされる八重童子がいい例だろう。一応黒鉄にもいるにはいるらしい。ほとんどみられることは無いらしいが。

現代においても下位の鬼は一種の精霊扱いされているし、鬼と契約している術師もいるにはいる。

それでも一学生が高位の鬼と出会ったことがあるわけがない。

「のう」

鬼の一言一言に体が震える。

勝てるわけがないと実感させられる。

少しでも不興を買えば次の瞬間自分の首は無いと思えるほどの圧迫感。

「おぬし、何故妾をここに呼び出した?」

「呼び......出した?」

「なんじゃおぬし気付いとらんのか。妾をここに呼び出したのはおぬしじゃろ?ならばそれ相応の理由があるはずじゃ」

理由...。この部屋はもしかしてただ魔物と呼ばれる存在を呼び出すだけの空間?

それならば確かに呼び出した意味はある。

ただしそれはこの鬼を倒すことになってしまうが。

どう答えればこの鬼に殺されずに済む?どうすればこの場を切り開ける?

(考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ!!!!)

焦ってしまい正常な思考ができない。

その時、ふと自分の胸のあたりから何か抜け出すのがわかった。

「パパ、しっかりして?大丈夫、芽愛がいるから」

そこにいたのは小さな手のひらサイズの妖精形態の芽愛。

「め..........あ......?」

小さな芽愛がほほに触れたとたん急に薄らぐ圧迫感。

そして体の中に流れ込んでくる温かい魔力。

「ほう?妾の圧に屈せぬか。面白いのう。ほれ、名を名乗ってみい。覚えておいてやろう」

どこまでも余裕の鬼は笑みを崩さない。

事実として今の和葉には鬼を倒すことはできない。

それでも、

「僕の名前は黒凪和葉。あなたに挑戦するものです」

宣戦布告。

動き出してしまった針はもう止めることはできない。














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