第15話 正面で

「……キミ、意外と…度胸あるとおもっとたけど、いざとなると、消極的やな…」


「何ゆうとるん! 怒ってなんてないよ! 私も…意気地なしやなぁ…って思って…。何やろ…こんなに久しぶりなのに…近いし、抱き締め合っとるし、キミは、胸元とスカートのす裾ばっか気にしとるし…」


「…ふふふ、そんなことない? ほんま? でも…約束を…守っててくれてたんやったら、そこに目ー行っても仕方ないなぁ…っておもって…」


「なぁ、どうなん?なぁ、なぁ、正直にゆうてよ。ほんまは、我慢できなかったやろ?」


「えー…、ここまで来て、まだ否定するん? え? 私こそ約束なんて、もう守ってないだろう?」


「…守ってなかったら、ここに…来てへん…よ…」


「ホンマやで、なぁ、もうすこし、近づいてええ? え? これ以上、どうやって近づくかって?」


「せやなぁ……予行演習…とか?」


「なんのって…、約束の…に、決まってるやん」


(ザザー…また涼しい風が吹く)


「うっわ! 涼しい!! 気持ちええね…。じゃあ、こういうのはどう? 先に、ほっぺ!」


「ん? 恥ずかしい? そんな事言うてたら、果たせへんやん! せっかく、私、今日、この時間の為に、大阪から、一泊で来たんやで?」


「そんなに…恥ずかしいんやったら、約束、破るん? せっかく、半分、約束果たしのに…? それじゃあ、キミが、ほんまのほんまに、二個目の約束破る気ぃなん?」


「あーあ、そっか、キミは逃げるのか! じゃあ、私、帰るけど、ええんやね?」


(ずず…肩の手を振り払おうとする音)


(グイ!! 再び、引き寄せる音)


「え? 今度は…正面で抱き合うん?だ、大胆にもほどがあるで…」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る