第10話 おんなじ

「え? 何? もう少し…大きな声で言うてよ…。こんなに近いのに、聴こえへんて、キミ、どれだけ声小さいねん…」


「…? あの頃? どの頃よ…」


(肩に乗せられた頭に頭を乗せる)


「…もう…なんなん…キミ、甘えん坊さんなん? それとも…」


「今のは…言わへん…事に決めたわ…。そんなに知りたがたって、ゆえへんもんはゆえへんなぁ…。…また、すねよる…。こんなに…くっついてるのに…解らへんなんて、キミの方がずっと…逆にこっちの方が…すねたくなるわ…」


(右手をそっと離す…)


「……もう…行くん? ……」


(頭なでなで)


「な! なんなんよ…、急に…。こんな風に…抱き締めて…手ぇ握って…今度は頭なでなで? キミ、どこでそんな技…覚えたん? もうほんま…キミがゆうてること、信用ならんわ…」


「何がって? …彼女…おらんって事…」


「え? しつこい? そないな言い方せぇへんでもええのに…こんな、可愛い…ヤキモチやん…」


「……ゆうてしもうた…私…キミの想像、ぶち壊さんかった? こんな、久しぶりに会って…」


「え? そっちはって? ……ぶち壊れるはずないやん…逆に……すんごい……」


「いやや!! これ以上は、ゆわれへんわ! 恥ず過ぎるし…。何よ、その顔…。そんな風に逃げるな? …逃げてるのは…キミもおんなじやないの?」


「あ―…もう1時間経ったわ…早いねぇ…時間たつの…ほんまに…。この歳になって、もう感じよる。時間たつの…年々早くなるんやなぁ…って……」


「え? それ解る? ならよかったわ…。それだけ、キミと私の時間の過ぎ方がおんなじやったって事やろ?」


「おんなじ…って…ほんまに…なんか…なんでも…嬉しいよね…」

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