Day30 握手

 手作りしたキャットタワーを置いて一週間が経つ頃、拾い猫アンバーはようやく気に入ったのかそこで寝ていることが多くなった。私としてはアンバーを迎え入れた選択したことが間違いじゃなかったことと、これを作った甲斐があったという自己肯定感に満たされてる。

 いつものようにキャットタワーでくつろぐアンバーにジェフが近付く。

「お前はそこが気に入っているのか?」

 まるで猫と会話を試みるように話し掛ける。

「何しているの?」

「猫は人間の言葉を理解するらしいので、実験をしているところだ」

「猫は恩を仇で返す生き物よ。あまり期待しない方ががっかりしないかもね」

「私の興味にすぎない」

 まるで私の助言を無視するように視線をアンバーに向けた。修理される前のジェフより、自我が成長しているということなのだろうか?

「アンバー。君はここに来て良かったと思っているか?」

 少し待つと、アンバーはジェフに対してゆっくり瞬きをする。猫の瞬きがゆっくりした動きの時は安心している様子だと、動物病院から貰った冊子に書いてあったような。

「君のご主人は私だけではない。くれぐれも怒らせないようにな。よろしく、アンバー」

 ジェフが手を差し出すと、アンバーはその小さな肉球を差し出して、握手をするようにそれを握る。

 アンバーはすでに心を開いているように思えた。

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