Day29 名残

 仕事終わりや休日に何もやることが無い時間は、両親の私物を片付ける。とりあえず寝室にあった大漁の衣服は終わったので、今度は両親が使っていた食器や衛生用品、娯楽道具、その他私に必要ない物を断捨離していく。ジェフに手伝って貰うのが申し訳ないと思いながら、両親の私物をペール用ビニール袋に詰めていく。名残惜しさは無いと言えば嘘になる。だから私とジェフが使えそうな物を少しだけ残しておく。さすがに衛生用品は残せないので全部ビニール袋行き。

「こんなところにネックレスがあったのだが、これはどうする?」

 ジェフの手には母が大事に持っていた婚約指輪を通したネックレス。無くしたと騒いでいた時期があった気もするが、一体どこから出てきたのだろう。

「どこにあったの?」

「洗面所の棚の一番上だ」

 思わず呆れた溜め息が零れる。

(あー。たぶん酔って帰ってきた時に置いたんだろうな)

「これは消毒して、写真の前に飾るわ。シャワールームはまだありそう?」

「いや、これが最後だ」

「分かったわ。そしたら食器をお願い」

「了解した」

 とはいえ金属は下手に消毒すると変色してしまうので、一旦そのままにしておく。

 食器棚には専用の皿がいくつかある。親戚が絵皿の教室で先生をやっているらしく、私も家族で何回かワークショップに参加した。よく取り分け用のお皿として使っていたので、絵柄がところどころ禿げている。

「さすがにもう使わない、よね」

 名残惜しさが湧いて捨てるのを戸惑ってしまう。でも正直、両親の絵のセンスは私には合わないから、写真と思い出が残っていればそれでいい。

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