Day21 朝顔
ショッピングモールは不定期で海外の物産市場が開かれる。中央通路は路上販売のように軒を連ね、物好きたちが集まる。
「今日はやけに人がいるな」
「いつもの物産展よ。ここじゃ買えない海外の珍しいものが手に入るから、意外とマニアが多いのよ」
「そうなのか。――あそこの店、見てもいいか?」
ジェフが指さした先はフラワーショップの出店。気になる品でも見つけたのだろうか。
「いらっしゃいませ。あ――」
女性店員はジェフがアンドロイドであることを一瞬で見抜くと少し仰け反った。私はそういう人たちに嫌悪の感情が湧いてしまう。
ジェフが目を付けたのは鉢に棒が刺さり蔓を撒いている植物。あまり気を配りたくないけど、私が質問する。
「すみません。これ、なんていう植物ですか?」
「そちらは東の島国で人気の朝顔と呼ばれる植物です。その名の通り、朝に花を咲かせ、昼には
「へえ。時間の分かる植物があるんですね」
適当に相槌を打つ。するとジェフは気に入ったように、
「一鉢、買ってもいいか?」
自分から
「いいけど、世話の方法は分かるの?」
「アーカイブにあるから問題ない」
「分かったわ。アンバーに悪戯されないように気をつけてちょうだい」
「ああ。対策は考えてある」
生きが良い鉢を一つ購入し、土を零さないようにビニールに入れてもらう。
家に持ち帰り、ジェフはさっそく日当たりの良い場所に置く。何だか楽しそうにしている。
「そんなに楽しみ?」
「この間、テレビで園芸の番組を見て興味を持った」
「なるほどね。ベランダに鉢を並べてもよかったのよ?」
「そこまでは財布が許さないだろ?」
ジェフはそこまで考えてくれていたのか。
「明日から朝が楽しみだ」
そういうと、またいつもの日常に戻る。ジェフもまた、同じ事を繰り返すだけの日常を退屈だと思っていたのだろうか。
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