Day14 お下がり

 雨の休日は流行病で早くに逝ってしまった両親の衣服を整理する。服好きの両親は着ない服もクローゼットに閉まっておく性分なので、タグが付いてようが、数回しか着ていないYシャツだろうが、虫に食われたTシャツだろうが関係なくハンガーに掛かっている。

「本当、着ない服くらい整理してよ……」

 溜め息が止まらない。それを聞きつけたのか、ジェフが手を差し伸べる。

「手伝おうか?」

「お願いするわ。さすがに骨が折れそう。とりあえず、まだ綺麗な服は洗濯カゴに入れてちょうだい。下着は全部捨てるわ」

「分かった」

 両親のクローゼットに詰め込まれた服たちを選別する。途中で軽い昼食を摂りながら作業すること、四時間は掛かっただろうか。捨てる服はもうペール用の袋にぎっしり。しかもそれが三袋も積まれている。

「尋常じゃない量だな」

「あなたがそう思うなら、私の感覚は正常ね」

「外に出してこよう」

「お願い」

 ジェフは三袋を軽々と持ち上げ、外の捨て場まで運んでくれる。私はその間にまだ使えそうな服を選別する。この際、自分の好みよりも長く使えそうな服を選ぶ。リモートワークの日は身なりなんて気にしないし。母のセンスは正直疑ってしまう。

「――どうせならジェフの分も取っておこう」

 父の体型はジェフよりも大柄だけど、そこまでだぼつくような大きさではない。これならジェフと外に出るとき、デモ連中に遭遇しても攻撃されない、と信じたい。

 ジェフが外から戻ってくると、私はジェフにいくつかの服を着せる。

「父のお下がりだけど、どうかしら」

「少し大きいと思うが、なぜ私が人間の服を着なければいけないのだ」

「デモ連中の目を欺くためよ。あと私の目の保養」

「あなたに気に入る格好だといいが」

「父の方がセンスあるから問題ない」

 ジェフを着せ替え人形のように着せては脱がせを繰り返す。父の服がこんな風に使われると、父も予想していないことだろう。

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