Day07 酒涙雨

「ねえジェフ。東の島国では七月七日は雨の確率が高いって知ってる?」

 ジェフは本棚の埃を一つ残らずハンディモップで取っていく。

「伝承アーカイブでは『七夕たなばた』に由来するものらしい。東の島国や大陸でよく伝わる伝承だが、雨の確率が高い理由が男女の恋愛によるものだとある」

「恋愛が由来なんて、東の人たちはファンタジーが過ぎるわね」

「私からすれば大差ないが」

「なぜ?」

「では、あなたは天地創造の話を知っているか?」

「もちろん。一週間が七日である由来でしょ? ――あ、そういうことか」

 私はすぐに勘付いた。全ての事象の、特に理由の裏付けがあるものの大抵は神話や伝承などの作り話。理解した、と目で合図するようにジェフを見る。

「あなたは本当に明哲だ」

「褒め言葉どうも。でも雨は降らなくとも、この時期の湿気は嫌なものね」

「それこそ七夕の男女の仕業かもな」

「誰にも邪魔されず、二人の時間を作る天才ね」

 外は空気が押しつぶされそうなほどの雲と気圧がのしかかっている。それは雲の上の幻想が実在するかのように。空の位置が低く感じた。

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