Day06 アバター
私を含む近頃の若者は、生まれ持った肉体よりもバーチャル空間で創造した
「夕飯ができたぞ」
「うん、今行く」
私はバーチャル空間に
「じゃ、遠慮なく」
サラダドレッシングはサウザン。私の好みに合わせて酸味が抑えてある。
今日も最高の食事が提供されるが、一つ悲しいと思うことがある。それはアンドロイドと「味」の共感ができないことだ。
「ジェフにも食べ物の味が知れたらいいのに」
「どうしてだ? アンドロイドにそんな機能は必要ないと思うが」
「アンドロイドが完全に自立して、人間の関係を完全に絶った時にはいらないんじゃない? 私が言いたいのは、食事の時間を誰とも共有できないことがつまらないの。特にジェフ、あなたと共有できないのは心が痛むほどにね」
「あなたがここまでの本音を明かすのは初めてだ」
ジェフは表情一つ変えないけど、私にはその声色でジェフが相当驚いていることが分かる。
「何か方法があればいいのだけど」
「あなたが楽しんでいるバーチャル空間を、仮想現実としてここに投影するのは? 食事はあなたの模倣電子体と同様に作り出せば、そう難しいことはないかと」
「さすがジェフ。たしかに仮想現実を投影するオプションはあるけど、そこまでのサービスを利用する対価がないの」
「楽しみは後の方がいいのでは?」
「燻されすぎて老いぼれになる前には実現したいわね」
ジェフは何だか嬉しそうに笑ったような気がした。
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