第四十話 装備の更新

「──とまあ、だいたいこんな感じだ。まあ、俺たちにもよくわからんというのが結論だが」


 俺はドローンカメラに向かって簡単に説明を終える。


 'きむきむの、カミカミカウントは3か'

 'いや、4回だな'

 'それは少し判定が厳しくないか?'

 'これも愛さ。甘やかしはいくない'

 'お前らな……。上位存在との遭遇だぞっ。もっと別にコメントすることがあるだろ'

 'だってなぁ'

 'そこはよくわからんって結論だろ?'

 '──はっ! 茜タソと木村の指輪ってよく考えたらもしかして神前で……'

 'それはもう、いいって。それよりさ、特調での話が詳しく聞きたいなー'

 '確かに。噂の魔窟の実態を是非'


 コメントが大量に流れていく。

 それを目で追うこと自体は問題ないのだが、内容がバラバラ過ぎて、どれを拾って答えるか迷ってしまう。

 そんな俺のおろおろっぷりを敏感に感じ取ってくれたのだろう。茜さんがひょいっと顔を出して、話を引き取ってくれる。


「まあまあ、みんなごめんね。今回はまだ話せないこととか多くて。それでさ、今日はこのあとなんだけど……」


 ──茜さんはやっぱりすごいな……。


 ドローンカメラの前で、軽々とその場の雰囲気を掌握して話を進めていく茜さんの頼もしい背中に、思わず感嘆してしまう。


「というわけで、八郎さん、行きましょー」

「え、なんだっけ」


 'おいおい'

 'きむきむ、把握しとらんのかいっ'

 'これがきむきむだろ'


「す、すまない。茜さんの背中に見惚れてた……」

「ちょっ……」


 俺は思わず言い訳をしてしまう。


 'まあ、なら仕方ないな'

 '茜タソの魅了にようやく気がついたか'

 'だな。それで、これから装備の更新だとよ。なんでも茜タソのお薦めの店にいくんだとよ'


「ああ、装備ね」


 俺は自分の装備しているものを見下ろす。

 言われてみればモンスターをひき殺した時についた傷が目立ってきていた。


「そうですよ、八郎さん。ボロボロですし、それに三十年前の装備なんですよね。やっぱり見た目がちょっと」


 'まあ、ダサいよなw'

 'しっ。せっかく茜タソが濁してるだろ'

 'そうだぞ、流行遅れとかいってあげるな'

 'お前らな……まあ、世界最大の迷宮に挑むんだ。装備品は大事だからな'

 'だな。きむきむも茜タソの言うことをしっかり聞いて垢抜けてこい'


「だ、ダサいのか、これ」


 俺はコメントをみた後に、改めて自分の愛用の装備品を見下ろし落ち込みながら、茜さんのお薦めのお店とやらに向かうのだった。

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