第三十三話 強さの査定
俺のことをスキルマスターと呼ぶ白衣さん曰く、時間がかからずに俺の具体的な強さを知る方法があるらしい。
「す、スキルマスターさんなら、すぐに終わると思うのです。ただ、場所が地下で。ちょっとだけ離れるのですけど……」
茜さんが涯無さんに舐められている現場から、あまり遠くに離れるのは気が引けたが、それでも自分の強さが具体的にどれくらいか知れるというのは、大いに惹かれるものがあった。
そういう訳で、俺は地下行きの満員エレベータに乗っているところだった。
あのフロアにいた特調の女性スタッフ陣の、ほとんどが見学したいと着いてきてしまったのだ。
──できれば次のエレベータに分乗して欲しかった。それか俺が次のエレベータでも全然よかったんだが。これは、居たたまれない……。
何せ狭い密室空間だ。
体感三千年、独りで過ごしたということもあり。右を向いても左を向いても人が居る環境ってのが俺には普通の人よりも苦手かもしれなかった。
そんな息苦しさも軽やかなエレベータの到着の音とともに、ようやく終わる。
「つ、着きました。ここです。それで彼女が強さの査定をしてくれるので……」
白衣さんがエレベータを降りるとパタパタとかけていく。
そして一人の人影をつれてきた。
「なんすか、先輩?」
──子供? いや、でもここに単なる子供が居るわけ無いよな。
俺は白衣さんがつれてきた女児を見て、思わず言いかけた台詞を飲み込む。
ここには変人しかいないと学習済みなのだ。一見して、女児にしか見えない人物が地下で一人増えたぐらいでは、すでに動じなくなっていた。
「えっと、よろしくお願いいたします?」
「ああん?」
──なぜか、ちっちゃい女の子にめっちゃメンチ切られているだが……
「あ、アケビちゃん! ステイステイ! ダメだよ。この人、今ネットでスキルマスターとして話題の人! 木村八郎さん!」
──白衣さんも、その俺の紹介はどうかと思う……
「はあ? 知らねえな。木村だか八村だか知らんが、自分で先に名乗るのが礼儀なんじゃねぇか。おおん? あと、俺様をその名で呼ぶんじゃねえ」
俺だけではなく、白衣さんにも可愛らしい声で、かみつくアケビちゃん。
──アケビちゃん、自分のことを俺様呼びなんだ……
ちっちゃい女の子が頑張ってメンチを切って必死に乱暴な言葉でイキっている姿は、慣れてくると、どこかほのぼのしたものにさえ見えてくる。それだけ俺も年をとったという事だろう。
俺は、そのほのぼのした気分のままに、名乗って挨拶をしておく。
「あー。俺は木村八郎です。よろしくね、アケビちゃん」
「はぁっ! ……ちぃ。それとその名で、俺様を呼ぶんじゃねえ!」
「あっと、えっと。アケビちゃんはゴーレムカスタマイザーなんです。アケビちゃん、スキルマスターさんの強さを測定したいの。ゴーレムをお願い」
話が進呈しないと思ったのだろう。
白衣さんが俺とアケビちゃんの間に入ってくれる。
「ちぃ。かし、だかんな!」
「はーい。いつものね。ありがとう、アケビちゃん」
「……八村っけ? 俺様のゴーレムはすげえからな! 胸、貸してやんから、死ぬなよ、おら」
そういって、華奢な肩で風を切って歩いていくアケビちゃん。
そのアケビちゃんに見えないところで、白衣さんが両手で俺についていくように促している。
俺はその白衣さんのジェスチャーのままに、アケビちゃんの後をついていく。
──聞いてる感じだと、ゴーレムカスタマイザーのアケビちゃんがカスタマイズしたゴーレムと戦うか競う、みたいな流れ?
その俺の予想は、正解半分、といったところだった。
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