導入ってどうすんの?
Web小説界隈で頻発する「プロローグ不要問題」ですが、新たに「独自設定不要問題」もぶち上がってるみたいです。その辺を今日は掘り下げます。
まず、以前も書いたのですが「プロローグを書くべきではない」「冒頭から独自設定を出してはいけない」ということでは絶対ありません。では何故このようなことがまことしやかに囁かれているのかと言えば、小説発表のハードルが下がったことが大いに上げられます。
その昔、小説を書くのにスマホなんかありません。ワープロでカタカタ書いていたわけです。そして手書きで原稿用紙にも書いていました。Webはないため、素人の小説はサークルや同人誌経由で愛好者同士で読まれるものでした。素人の小説が好きな人は愛好者の中で固まるため、書きたい人の筆力は上がりますし筆力が足りない人も顔も知らない人の批判に晒されることも(現在に比べれば)とても少ないことでした。
そして21世紀も5分の1を過ぎた今。スマホで思いついたらパパっと書けるしコピペしてぺぺっと投稿できるし検索すれば好みの小説はゴマンと出てくるし、小説でなり上がろうとするなら世はまさに鎬を削る群雄割拠の時代です。
すなわち、書くのも読むのもハードルが下がりました。構成も起承転結もへったくれもなく思いついたことを書きなぐって「小説」というものもあれば、見たもの読んだもの全てに「最悪」「つまらない」と憂さ晴らしでコメントを付けまくる輩も登場します。そういう時代に生まれたのが「プロローグ不要論」だと考えています。
プロローグが不要というのは、つまり「最初から話に入れ」ということです。小説を書きなれない人のファンタジー小説は本当に「最初に設定を羅列する」ことが多く、あるあるの失敗例です。
例えば「〇〇王国の古くから〇〇で〇〇な〇〇が………」という話が続き、そしてそんな〇〇な話の子孫が今の主人公です、みたいに出てくる。そして最初の〇〇な話は本編にその後一切絡まない。え、〇〇な話だったのはどこに行ったの……? と読者は混乱します。
何故このような事が起こるかと言えば、作品全体の構成が行われてなく、プロットが存在しないことが原因の大部分だと思われます。ゲームのチュートリアルのように「最初に覚えてもらわないと」とガンガン思いついたことを詰めこんでしまうのですが、読者としては「一体何を読めばいいの?」と思ってしまいます。
その状態への乱暴な警鐘が「プロローグ不要論」にあたると思います。「お前の設定を語る前に主人公を登場させろ、話を進めろ」というわけです。
ところがこの不要論の目論見だけがどこかに行き、「プロローグがある作品はつまらない」になりました。実際「プロローグで設定を詰めこんで滑る」というのは未だによくある話です。
そういうわけで、個人的にこの「プロローグ不要論」的な失敗を打破するひとつの対策は「とにかく人を動かす」ことにあると思います。例えば、高校生が主人公だと朝起きて制服に着替えて学校に出かけることが多い。これは以前ネタにしましたが、ぶっちゃけ「野郎がグチグチ言いながら学校へ行くだけ、面白い?」と思うのです。
例えば同じような導入でも、朝起きた状態が変化していたらどうでしょう。ある朝起きたら毒虫になっていたとか、性別が変わっていたとか。制服が意志を持って喋りだしたとか隣に美少女が寝ていたとか、政府の緊急支持で国民全員が朝飯抜きになるとか、停電で信号が止まった中で学校へ行くとか、切り口は様々です。
もし学園モノを書きたいなら、書きたいシーンを最初に書くべきですね。部活ものなら部活のシーンから、友人との関係なら放課後歩いているところから、進路に悩む話なら進路調査票を書いているところから。最初に「これはこういう話です」と提示しないと「何がやりたいんだ?」になります。
少なくとも冒頭から設定の羅列がメインで、その間主人公が朝起きて服を着てご飯を食べるのに数万字使っていたら「うーん……」となると思います。「俺はなんたら、〇〇王国の〇〇何世の息子〇〇の記憶を受け継ぐ前世持ちのサイコキネシスを実は使えるうんだら的な何某で」とかやってるくらいならさっさと着替えて飯食ってなんか面白いことやれって話です。
そういうわけで、プロローグそのものがいらないものとは全く思いませんが「プロローグ不要論」そのものが間違っているとも思いません。
そもそもトールキンの時代の小説と今の時代の小説を一緒にしちゃあいけないと思うのですが……それはそれ、これはこれよ?
というわけで、導入や冒頭に困ったら主人公を派手に動かしましょう。出来れば小説で書きたいテーマに沿って動かすといいですね。今日はそんなところです。
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