NTRとSMと現実

 何となく流行っている「NTR」。意味は「寝取られ 」として要は略奪愛のことである。


 ただ本来の「寝取られ」という意味からすると昨今の「NTR」は大分カジュアルである気がする。今日はちょっと性愛の話がメインなのでそういうの苦手な人はスルーでお願いします。


 さて、「寝取られ」というくらいなので本来はセックスありきの話です。つまり、つまりのところ「あなたのよりもカレのがおっきいのよ!」「マグロのおまえなんかよりすっげえ名器なんだからな!」みたいなニュアンスがあるわけです。そこで自身の性技を貶められる、更にその惨めさを噛み締めるみたいなニュアンスがあるわけで個人的には「NTR」と言われると「うわぁ特殊な趣味だなあ」と思っていました。ノリとしてはスワッピングに近いと思ってました。


 そこをカジュアル消費が始まったNTR。単に「浮気」という文脈で使ったり相手の心情とは別に他人と性行為を行う(例えばレイプなど)ことに使ったり、なかなか広がった意味になったと思います。


「えー、NTRって普段自分と致してる相手が他の人の性行為の虜になるっていう文脈が大事なんじゃないの!?」とは言ってもカジュアルになった言葉の時間を巻き戻すのは難しい。


 個人的に似たような意味に「SM」があると思ってる。加虐趣味と被虐趣味。ものすごく背徳の他人をモノ扱いするという世界。モノになりたいMとモノになって悦ぶMを眺めるSと、まあ、そういう奴ですよ。本物は「女王様とお呼び」なんて言わない。じゃあなんて言うのかって?「私の名を軽々しく口にするなクズ虫が」です。これを「理解できないな……」と思えるなら大丈夫です。普通は理解できないから特殊なんです。


 そんなSMですが、かなり意味が拡散しました。「ドS彼氏」という言葉に惹かれても大体SMプレイはしておりません。「ちょっと意地悪で執着の強いN」です。「俺Mだからさー」は「寂しがり屋だから話しかけて欲しい」であって「じゃあやっぱり開発とかされてるんですか?」とか返してはいけない。そもそもカジュアルにそんなこと言ってはいけない。でも意味が拡散しちゃったんだもん、仕方ない。


 というわけで、そういう言葉を使う際はちょっと気をつけたほうがいいのでは、といつも思っています。カジュアルに染まるのか、抗うのか。それでも使用者はその奥の意味を知っていてもいいかな、とは思います。そういうわけでご都合主義的に使用される言葉には注意です。


 次回こそちゃんと「ご都合主義の打破」について考えます。それでは慎重に書きましょう。

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