編集者の視点は別物
ちょっと前に流行っていた「努力の描写は必要か」という話なのですが、結論は単純で「好きに書け」で終わる話ですがちょっと書いていきます。これからする話は「SNS上にある創作論や脚本術を真似するけど書けない!」という人に向けてます。
まずまず、大前提として「読者は努力シーンを読みたがっている」とか「努力の押しつけは現代らしくない」とか尤もらしい意見が飛び交っていたけど、それって作家が考えることじゃないよね。
編集者が考えることだよね……。
もちろんマーケティングとしてそういうことを考えるのは大事なんだけど、あくまでもマーケティングは編集者としての考え方。どんな作品が望ましいとか、どんなキャラが好まれるとか、考えるのは大事だし統計から推測するのも大事。だけど大事なことだからもう一度言うけど、それは編集者として作品を売り込む視点で必要なこと。
小説家としての視点じゃないんだよね。
この小説家としての視点と編集者としての視点の混雑の何が悪いかと言うと「編集者の視点のみで小説を書くことが正義だと思い込む」ことだと思う。
これ、絵画にするとかなりグロテスクで「たまの休日に公園で写生しようと思ってせっかくだからと絵画について勉強をしてみたら、モダンアート論とかどこの画壇ではこんな画風がウリだとか誰先生に師事しないと日展には入れないとかそんな話題しかない」くらいのことなんだよね。
公園で写生したい人が最初に必要としているのはデッサンの仕方とか水彩絵の具の使い方とか、風景画を描くコミュニティであって「どうすればウケるか」じゃないはず。まずは作品をしっかり仕上げる力をつけるほうが大事。
つまるところ「読者にウケる設定を探すためにエタ連発する」というのは絵画だとモチーフが気に入らないからと途中で投げ出しまくってる状態ということです。もちろんある程度実力のある人がそれをやる分には問題ないのですが、やっぱり初心者に「気に入らないならやめちゃえ」というのは誠実じゃない。
作品を仕上げる力がないのを「ウケなかったからやめてもいいんだ!君は悪くない!」と何で言い換えるかと言えば、その方がウケがいいからですね。
「勉強しなくていいよ!その方が個性的だからね!」
「働かなくていいよ!今はネットでちょいちょいやって広告収入で稼げる時代だからね!」
「僕凄いこと言うでしょう?だから僕の本を買ってよ!僕のクラファン応援してね!」
事情があれば作品がエタることもあるので「絶対作品は仕上げるべきだ!」とまでは言わなくても「出来るだけ仕上げるほうが望ましい」のに疑う余地はないわけですよ。それをプッシュするのは一体何故?と聞かれれば、まあ、そういうことですよ。
努力シーンの話に戻ると「その話に努力シーンが必要なら書くべき、不要なら書かないべき」としか言いようがない。読者が好むか好まないかはまた別の話。「最近の読者は努力シーンを嫌がるらしい」は視点を変えれば「修行のパートは話が単調になり飽きる」「話が進まないため積極的に読みたいと思わない」「作者のダイレクトな思想や自己満足が透けて見える」などの要因が考えられる。そこを踏まえて作中のシーンの調整をするのは良いと思うし、それが「読者は努力シーンを好まない」に対する編集者の仕事である。
じゃあ小説家の視点は何かと言えば「このキャラは何故修行しているのか」「修行シーンの必然性をどう表現するか」とまずは作品内に目を向けることじゃないかなと思う。
いろんな創作のスタンスがあると思うけど、「この物語に必然性はあるか」を検討した先に「このストーリーは読者に好かれるか」があるわけで、必然性のあるストーリーを作れなかったら売れる売れない以前の話だと思うのね。要は安易に「読者は努力シーン苦手だから努力キャラは出さないほうがいい」みたいに売れ筋や読者の視点しか気にしないのは初心者にはオススメしない。
まずは自分に書けるものから書くべきで、マーケティングとかそういうのはある程度作品が仕上げられるようになってから気にした方がいいと思う。この辺で消耗しても仕方ないので、この大SNS時代に他人を気にしないのも難しいけど、まずは他人の目を入れずに「自分の作品」をどうにかするところから始めたらどうかな、と思う。
さて、夏も折り返し。虫の声も聞こえるようになってきましたがマイペースに書きましょう。
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