ワークショップ聖女⑥「長編か短編か」

前回でお話の方向性の細かい部分が決まったので、今度は「どんなシーンがあれば読者が読みやすいか」を検討します。


まずは、長編にするのか短編にするのか。これは読者に何を見せたいのかを重視して決めます。長編にする場合は聖女が塔に閉じ込められる過程を丁寧に書き、聖女の悲哀をクローズアップすることで吸血鬼との交流が彼女の救いになることを書くことが出来ます。更に登場人物を増やすことができます。例えば吸血鬼に聖女抹殺を命令する魔物のボスや聖女を守ろうとする人間の騎士。騎士は普通に聖女に惚れてるライバルにもなるし、兄弟関係にすれば「聖女の幸せとは」を考える理解者にもなる。ちなみに女性騎士にすると吸血鬼側のライバルにも出来るし、逆に聖女を守るのに必死に吸血鬼を狙うキャラにもできる。更にこの世界で聖女と吸血鬼がハッピーエンドになる方法を探す旅が始まるかもしれない。長編に膨らませてもまあまあいけそうな設定。


しかし、この作者は短編にしたい。短編にするなら、とにかく展開をはやくしたいので二人の交流期間などナシでいきなりエモエモなクライマックスに持っていける。エモい結ばれない定めの恋愛をエモく書きたいんじゃあ!ということで作者は短編で書きます。


次に冒頭シーンをどうするか。長編にする場合、シーンは時系列にしたほうがいいでしょう。聖女が塔に閉じ込められる場面を最初にして、何故彼女が塔に閉じ込められるのかを丁寧に書きます。司祭らしき人に「あなたは祝福されている、名誉あることです」など言わせることで聖女が周囲から特別で晴がましいものであると認識させていることを語りましょう。それから塔の中でひたすら祈るということがどれだけ辛いのかを読者に見せますが、聖女は特殊な教育を受けているためにそれが辛いとは思わないのです。これはディズニーのラプンツェルでも簡単なあらすじの冒頭シーンの後に「塔の中でも楽しく過ごしているよ」というシーンを挟むことで達成されています。


短編は「エモエモのエモ」をやりたいので、まず最初に二人の交流を見せつけてやりましょう。初っ端からイチャイチャさせるのです。そんでまずは読者に「この2人はこんなに想いあってるのだ!」みたいなものを見せつけます。見せつけてやるのです。状況説明なんて後回しです。とにかく見せつけることで、どんな結末にしてもエモが読者の印象に残ります。


そうすると長編と短編で演出も変わってきます。長編ならこの世界の成り立ちを中心に少しお固く、短編なら二人の世界を演出するために甘くロマンティックに。恋愛にはムード作りが大切です。悲壮感を前面に出すのか、お星様飛ばす勢いでキラキラさせるのか。それはもう作者の味付け次第です。焼きそば、塩にするか?ソースにするか?そんな感じです。


さて、結構楽しくなってきた次回は短編であることを前提に細かいストーリー、結末を決めていきましょう。それでは楽しく書きましょう。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る