君たちはどう読ませるか

PVアップのコツとしてよく言われること。


「読者層の想定」


うん、これは本当に必要だと思うし、やらなきゃ行けないことだと思う。


例えば高校生が主人公なら、読者層も高校生を意識するかもしれない。それか高校生になっていない中学生。あるいは高校生だった頃を懐かしむ大人が対象かもしれない。


でもさあ。


あらすじのところに「高校生にオススメです!」「大人の人にオススメです!」って書くのもさあ、なんか違うよね……?特に「大人にオススメ」の奴。なんか変な意味が入りそう。別に変な意味は無いんだけどさ、でも「大人」と言うと勝手に「エッチ!」な方面になってしまう。なんで?


昔「ライ麦畑でつかまえて」の村上春樹訳を読んだんだけど、かなりキツかったのだけ覚えている。内容はそれほど覚えていないのに、やたらと主人公の自意識が刺さりまくって、なんかもう痛かった。何でこんなに痛いのかな、と途中で投げ出そうかと思うくらいにはキツかった。だけど、決してつまらないわけではない。ただ、合わないと言うだけ。


おそらく、自分みたいな人がターゲットではなかったんだろう。特定の年代、特定の職業、特定の回想の中でしか理解できない感覚というものがあって、その感覚から外れると対象ではなくなりその作品を楽しむ権利すらなくなる。流行というのはそのひとつで、読まれるためには必要だけど、長い目で見れば「だから何なのだ」と冷めた目で見られてしまう。90年代の漫画で「チョームカつく!」みたいな言葉を見つけて背中に変な汗が張り付くような、そんな感覚。


そして「時代」というのもなかなか難しくて、例えばベルリンの壁崩壊や911の映像をニュースで見た世代は「これから世界はどうなるのだろう」とひとつの時代の終わりを肌感覚で持っていて、そうじゃない人への説明が難しい。オウム真理教の一連の事件に阪神大震災、山一證券の会見に凶悪化した少年犯罪。なんだろう、私たちの世界はどうなるんだろう。そんな不安を常に抱えていたような気もする。


世界の続きを考えると、追いかけるようにリーマンショックがやってきて、東日本大震災。私たちの日常は大きく変わり、気がつけば誰もがスマホを持つようになっていた。ウィズコロナの時代に突入して、世界は再びロシアとウクライナとの狭間で揺れている。この時代の不安感をそのまま書くのも面白いけど、あとの時代の人にはおそらくなかなか理解できない。


もう歴史の教科書の出来事くらい昔だとフラットに考えられるのかもしれないけど、自分の親世代くらいの説教ってものすごく冷めて聞こえるし、古臭くて聞いていられない。あなたと時代が違うのよ、あなたと同じだと思わないで。


これと逆を行くのが「大人はわかってくれない」という内容のもの。「どうして私たちを理解してくれないの!?」という悲鳴のようなものも感じるけれど、ものすごく独りよがりなわがままにも聞こえる。


個人的に「大人はわかってくれない」系のコンテンツは賞味期限があるので長いこといろいろやっていこうと思っている人にはオススメできないなと思ってる。だっていい歳して「大人なんかダサいよな?」みたいなのをやってても、あなた大人ですやん、としか……みたいな人たまにいる。大人って何だ!なんなんだ!


自分の話をすると、今書いている作品は確実に高校生にはオススメしない。いろいろと大人の汚いところとかダメなところとかをとにかく詰め込むだけ詰め込んでいるので、人間というものに絶望するかもしれない。逆に高校生が読んだらどんな感想になるのか少し興味はある。いや、読まないでもっと楽しい小説をほしいけれど。


さて、読んでもらうために「誰に」「何を」読ませるのが最適解になるのでしょう?


え?


どうせ異世界転生して俺TUEEEEするから時代とかあんまり関係ない?


うーん……


そういうものなのかもしれないな……そういうの面倒臭いからみーんなファンタジーなわけだし……。


でも将来、「異世界転生で俺TUEEEEだって、ダッサ!」みたいな時代が来たら、どうする?


そのときは何を書く?


まあつまり、好きなものを好きに書くのが最適解よ。まずは書くものがないと読ませられない。ターゲットを考えるのは、ある程度書けてからじゃないかな。


好きなものを好きに書けない時代なんて御免だけど、先の時代も見据えて書いていきましょう。

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