感情を書くな、流れを書け
このエッセイを書く動機のひとつとして、何かと創作界隈で「このやり方はありやなしやランランカンカン」というのを見ていて何か言いてえ~というのがあります。そういうわけで今日の話題は「感情は行動で表現しろ問題」です。
いつもの如く、結論は「好きに書け」なんですが、それじゃあアレなので個人的な見解を書きます。
実は感情表現も描写表現も本質ではなくて、この話の本質というのは「テンポ」だと思うんだよね。「感情を書いてはいけない」と思い込みすぎて描写を長ったらしくグダグダ書いてたらつまんないし、かと言って「私は感動した!」だけだと興醒めになることもある。
余談ですが「感動した!」というとそろそろ古い人間なので無条件で小泉元首相が優勝トロフィー持ってるところしか出てこないのですが、「感動した!」なんて短いフレーズを定着させるなんてやっぱりそういう面ではすごい人だったよなあと思うのです。
大事なのは、あくまでも「雰囲気と流れ」だと思うのです。「彼女の髪が甘く香り、その唇から小鳥の囀りのような可愛らしい声が耳をくすぐる。彼女を抱きしめて、このまま世界が終わればいいのにと強く願った」みたいな感じで甘く切なく恋を語らうシーンがあったとして、「彼女大好き!セックスしたい!」と書いたら身も蓋もないじゃない。
「君はおっぱいが大きくて柔らかそうな女性だね!」
「あなたもイケメンで経済力が抜群だわ!」
「僕らセックスして子供を作りませんか!?」
「本当はセックスしたいけど、恥ずかしいと言わないとはしたない女と思われてしまうわ!」
「いいじゃないかはしたない女俺は好きだぜ!」
「あーれー!!」
ほら、身も蓋もないじゃない。そこをどうロマンティックに覆い隠すのかが小説を書く醍醐味でもあるわけでさぁ。
反対に、描写がグダグダ長くても良くないこともあるよね。
「フハハハハ、人間どもよ思い知れ!」
魔王は村を焼き払った。多くの人が死んだ。
「待て魔王!」
勇者の必殺の剣が閃く。魔王はバリアで防いだ。
キイイイイン!
「その程度か、勇者め」
「逃げるな卑怯者!」
魔王は去った。勇者は魔王軍の狼藉に耐えきれず、その両目から涙を零した。
「許さないぞ、魔王め」
先程まで可愛らしく笑っていたヒロインが勇者の腕の中で体温を失っていく。喉の奥が熱くなり、ヒロインとの思い出が頭の中を駆け巡る。きつくヒロインを抱きしめるが、ヒロインはもう動かない。勇者は拳を握りしめ、魔王への復讐を誓ったのだった。
いや、途中からなんか勇者の心情ばかり書いてて、読者としては「なんでここばっかりくどいの?」となると思う。「いや、悲しいって書いちゃいけないから頑張って描写してみたんだけど」となりそうだけど、前のシーンが「焼き払った」「死んだ」なんだから、「勇者はヒロインが死んで泣いた。悲しみの中魔王への復讐を誓った」と揃えた方がテンポがよくていいんじゃないですかね?個人的に描写大好き人間なので「焼き払った」をもっと書き込みたいし、「逃げ惑う人々」も入れて悲壮感バリバリ出したいですね。でもそういうのをくどいと思う人もいるし、「キンキンキンキン! 」な表現をするなら描写は邪魔だよなとは思う。
そんな感じで、感情も描写も全ては演出の範囲なんだから「こうしなきゃならない」っていうのはないと思うんだ。だけど、小説書くなら描写するスキルくらいはつけてもいいと思うんだな。スキルをオフすることは出来るけど、ないところからオンにするのは難しいので……。
近況ですが、著しく体調を崩して寝込むレベルだったのですがぼちぼち復活したいなと思ってます。次回の話題は思い浮かばないので、次回考えたいと思います。それではのんびり書いていきましょう。
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