元魔王の仲間の修行期間②

「じゃあ、お主の好きなシチューにでもするか」


「ありがとうございます」


「そんな、固くなくていいのじゃよ……昔みたいに柔らかくていいのにな……」


「5,6年のブランクはすぐには埋まりません」


「そうじゃの、ゆっくりでいいから、昔の勘を取り戻したらいいのじゃ……と、そんなことを言ってる間に完成したぞ、ささ、冷めない内に食べよう」


 出されたのは、まだ湯気が出ているシチューだった


「「いただきます」」


 懐かしい味がする、クリームソースのほんのり甘い香りが口の中に広がる


「どうだ?久々のシチューは?美味しいか?」


「はい」


「これを食べたら、修行を始めるぞ」


「早く食べた方がいいですか?」


「ゆっくりでよいよ。 焦ると、大変なことになるからな」


「……落ち着いて食べます」


 ~~~~~~~~1時間後~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「昼も食べたし、始めるとしよう……修行を」


「手加減無しでお願いします」


「手加減をしなければお主は死んでしまうからのう、手加減はする、だが……」


「だが……」


「お主が強くなっていったら手加減しなくなるかもな……」


「あくまで、強くなったら、ですよね?……」


「ほ、ほ、ほ、強くなったら手加減無しにはなるが、その頃にはお主も儂の領域に達しているだろう」


「行けますかね…‥その領域に……」


(やはり、不安に思うだろうな……追いつけるかどうか、まずは、そのメンタルから鍛え直した方が良さそうじゃ)


「どうかしました?」


「ほ、ほ、ほ、すまない少し考えことをしていたみたいじゃ」


(みたいって……自分のことなのに他人事みたい……)


 ここはのどかな森の中、様々な鳥の鳴き声が聞こえる、とても穏やかだ


「それでは始めよう……装備クイック精霊武装」


「本気で殺しに来てませんか……?」


「気のせいではないか? この程度で殺しに来ていると思うとは……まだまだじゃな」


「なら、少し未熟ですが、全力で挑ませてもらいます! 装備クイック大魔導師武装」


「まだ不完全だが、確かに装備クイックは出来ているようじゃな」


「見様見真似でやったので……」


「見様見真似でここまでできるとは……若いとは恐ろしいものじゃの……」


(もし、教え方を間違えれば、これほどまでの才能をドブに捨てることになる……しっかり考えなかれば、指導しなければ……)


「………何も、仕掛けて来ないんですか?」


「これは、面白い……全力を出さねばならないようじゃ……交差クロスするフレイム


魔法マジックシールド


「無駄じゃよ、この交差クロスするフレイムは、魔法により炎ではなく、本物の炎じゃ、つまり……空気中になる酸素を吸収しながら、加速し続け、威力が増していく、どれだけ守りを固めようとも、無駄じゃよ」


 余裕な様子である。勝ったとでも思っているのだろか?

 そんな甘い考えなわけがない。何せ最強の賢者であったからもちろん反撃カウンター対策もしている。


ウォーターの……」


「無駄じゃ、倍反撃トゥワイスカウンター


 倍反撃トゥワイスカウンター、名前から分かる通り相手の攻撃を2倍にして返す魔法勿論、無防備だと一発koという状況である。

 だが、防御しても無意味になる何せ、反撃カウンターは防御貫通効果を持っているからである。


(まだ行ける!!!)


倍反撃トゥワイスカウンター


(これ以上反撃カウンターをしたら当たったどちらかが、死に当たり一体が吹っ飛ぶだろうな……ここは一つの成長として、喰らっておくとしようか……)


 ドォォン


 辺りの砂埃が舞う、衝撃波が広がる


「ここ数年でよく成長したようじゃな」


「伊達に冒険者をしていたので……」


「だが、まだまだじゃ、まずは、自分がこうしたら相手がこうするという予測ができるようになって、先読み行動ができるようになるか」


「最初から無茶を言いますね……」


 それはそうであるまだこれでも修行は始まっていないのである。


「無茶だなんて、自分の実力を信じていないようじゃないか?」


「そんな訳ありません……」


「お前は昔から自分に自信がない……まずは自分の実力を信じることから始めなければならん」


「……そうですか」


「まあ、そう凹むことは無い、実戦をたくさん積めば自信は付いてくる」


「実戦ばっかになるってことですか?」


「そうもしなければ自信なんて付かないだろう?」


「そうですか」


「まるで他人事じゃの……自分事だと考えて取り組んでほしいものじゃ」


「わかりました。常に自分事だと思って行動します」


「よろしい、ならまずいろいろと魔獣を召喚する。召喚された魔獣と実戦をしてもらう」


階級ランクは?」


「まずは手始めに銅で”どう”だ?」



(おやじギャグはこの時期でも寒い)


 いつもこうである隙あらばおやじギャグを言ってきては寒い思いをしている。

 そろそろ勘弁してほしい。言われるたびに熱魔法を使って暖を取っているほどである


「どうした? 体が震えておるぞ?」


 まるで自覚がないようだ。呆れた師匠である。


「少し寒気がしたので」


「そうか」


濁しても気づかないほど鈍感である。自分がおやじギャグを言っていることを……


「まあ良い、早速召喚するとしよう、いでよ!」


 召喚されたのは、魔法耐性が高い低級人形パペット


「こやつは魔法耐性が高い低級人形パペットじゃ。さあ、どう倒す?」


 ミサキは考えた。ただでさえ魔法耐性が高いという低級人形パペットを魔法を使わずにどう倒すのかを……


「まさかとは思うが、魔法を使わずに倒そうだなんて思ってないじゃろうな?」


「魔法を使って倒せと言うのですか?」


「それ以外何がある?魔法使いまたは賢者の武器は魔法しかない。それ以外のことで倒せると胸を張って言えるならいいがのう」


「ならどう倒せと言うのですか?」


「それは自分で考えたらどうじゃ?そうしなければ自分のためにならないぞ」


 この日をもって本格的に修行が始まった……

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