1-4章 絶望のレクイエム

元魔王 元部下と戦う①


 今まさに、僕は”魔剣”のバーパルソードとの戦いに身を投じている


「まさか、魔王様と剣を交えることができるとは、光栄です」


「こっちは光栄どころか、最悪だよ!」


「あーははははは!いいですね!その絶望したような顔!最高です!魔剣ダークソードダンス


 最さ悪だ。こんなサイコパスと戦う羽目になるなんて……


 時は遡り……転職を終えギルドを出た後


「どうして、こんなのを選んだんだろう?」


「”そんなの我は知らない”」


「聞いていないって」


「”それにしても、バーパルソードか……我が魔王だった時の最強幹部だった奴だな”」


「え……そいつと戦うの?」


「”最悪、装備クイックすればいいだろ?”」


「脳筋ばっかじゃん……」


「”ん?誰が脳筋だ?”」


「はい……すみません」


 ”目的までは南南東に1万歩、南西に1万2000歩です”


「求めてないよ!そんなこと!任務だから行かなきゃいけないけど!」


 そんな、愚痴を言いつつ、久々に来た王都を満喫することにした


「ていうか!そうだ!久々に来たし、武器を整えますか!」


 ”武器屋へは北に300歩です”


「こういう時にだけ反応してよ……」


 言われた通り北へ300歩行くことにした


「武器屋……なんか僕の家みたいな感じ……」


 木造で古いレンガで覆われている。扉も古く、取っ手は錆びていて、いかにも昔からある店です感がある


 ”目的地に到着しました”


「お邪魔しまーす」


「お邪魔しないでください」


「スイマセン!」


「いやいや、冗談だよ。いらっしゃい!何をお探しだい?」


 店主は40代の女の人で、優しそうな印象を感じる


「剣を探しているんですが、なんかいいのありますか?」


「そうだね……これなんかどうだい?」


 取り出されたのは魔鉄で作られた長剣ロングソードだった


長剣ロングソードだよ。今はね……」


「この店にしかないってどういうことですか?」


「なんかねある日に他の店にあった長剣ロングソードが無くなっていたんだってていう話さ……でこの店だけ無くならずに残ってるってわけだ……」


「そんなことって、ありますか?」


「普通なら有り得ないね。何せ、武器を操る魔法かスキルなんて今発見されている中ではないからね」


(Hey。全知全能ゼウス武器を操る魔法かスキルってある?)


“魔法がありませんが、スキルはありました。あります。スキル名 兵器操術ウェポンマスター


(今発見されている限りはないんじゃ……)


“スキル保有者は“魔剣”のバーパルソードです”


(今向かってる任務対象じゃない?)


“一致しています”[


(え、てか、なんで知ってるの?)


“森羅万象はこの世の全てを知っています”


(とんだチート能力じゃん)


「それにしても、犯人の目的はなんなんだろうね?」


「それは、たとえば、すごく長剣ロングソードが欲しい人だったとか?」


長剣ロングソードなんて、鍛冶場に行ったら買えるけどね」


「そんな簡単に買えるなら奪う必要なくないさ」


「じゃあなんで?」


「もしかしたら、使われている鉄かもね」


「鉄?」


「ここら一体の長剣ロングソードに使われている鉄は世界にも珍しい魔晶鉄で作られているからね」


(え、魔晶鉄って何?)


“魔物を倒すともらえる魔晶が鉄と合わさることでできる鉄のことです。耐久力が高く、武器にすると、その所有者の魔力に馴染み、属性が付いた剣になります”


(つまり、魔剣になるってことだね?)


“はい。ただし、5年以上所有した場合です”


(長くない?)


「そんな珍しいのがなんで鍛冶場で買えるの?」


「何せ、魔晶鉄は世界で見ても珍しいものだが、ギルドには山程魔晶鉄があるから、それが鍛冶場に回ってきて、錬成されるからさ」


「ギルドってなんかすごいね」


「ギルド自体は凄くないね。凄いのはそのトップだね」


「確か、元ギルド所属の勇者でしょ?」


「そうだね。昔はよくこの店に来てたよ」


「え、てことはトップと顔見知りってこと?」


「そうだよ。昔は今よりももっと強くてね。あんたじゃ比べ物にならないくらい強かったね」


「辛辣」


「は、は、は!冗談だよ!あんたの強さは見ただけじゃ分からないからね!」


「よかった」


「でも見るからに弱いけどね。で、だいぶ話がそれたが、長剣ロングソード買うかい?」


「最後の一本でしょ?やめときます」


「いいんだよ!それで犯人が分かったらそいつをこの剣でぶっ飛ばしてくれ」


「じゃあ、買います。それで犯人をぶっ飛ばします!!!」


「お代はタダでいいよ」


「いやいや、そんなわけにはいきません」


「いや、いいんだよ」


「わかりました。タダでいただきます」


「それでも犯人をぶっ飛ばしてきな!」


「はい!!!」


 こうして、長剣ロングソードを手に入れ、長剣ロングソードを盗んだ犯人である魔剣”のバーパルソードのいるであろう館に向かった


 ~~~~~~~~30分後~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「すごい、不気味な館だな……呪いの墓より怖い……」


 着いたのは、あの武器屋と似たような外見の館だった


 そこには顔見知りの人がいた


「久しぶりだな」


 そう、一応仲間であるミサキだった


「え、まさかとは思うけど、また同じ任務?」


「そうだけど?」


「じゃあ、またよろしくね」


「前みたいに暴走しないでしょうね?」


「そこは、大丈夫。神様に修行してもらったから」


「また、暴走でもしたら、力尽くでも止めるとしよう」


「大丈夫、大丈夫。で、早く中に行こう。なんとなく、やばい気配がするから」


「それは同感だ」


 ギイギギギギギ


 ものすごい軋み音がした


「入ったらすぐに、二手に分かれよう、中はたぶんだけど、すごい広いから」


「できるだけすぐに合流するぞ」


 そう言い二手に分かれて館の中に入った




 館に入ってすぐ禍々しい気配を察知した


「おやおや?あなたは死んだはずの魔王様じゃないですか?」


「そうだけど?」


「まさか、人間に転生して勇者をしているとは、驚きですね」


「まず、お前な誰だ?」


「私ですか?まさか、忘れてるなんてありませんよね?"魔剣"のバーパルソードですよ」


(やっぱり、こいつが長剣ロングソードを盗んだ犯人か……)


「10年ぶりですか?久々に魔王様と剣を交えることが出来て光栄です」


「修行した成果を見せてやる。装備クイック魔王武装!!!」


「おや、装備クイックができるようでしたら、手加減はしなくていいですね」


(普通、そうはならなくない?)


蜘蛛スパイダーネットの糸の斬撃ブレード


「最初から広範囲かよ!!!」


(ていうか、剣の数以上じゃね?)


“おそらく、スキルにより盗んだ剣だと思われます”


(まじか……)


 こうして、“魔剣”のバーパルソードとの戦いが始まった

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