元魔王 神との修行(中編)
神との修行が始まってから一週間がたった。中々器が完成しませんねと神様が文句を言っていた。文句を言われても知らんがな。こっちはこっちで頑張ってんのに。あのくそ神様!
「で、今日は何するのさ?」
「今日は初めての実戦をします。」
「マジで!やったー!」
「実戦で喜びすぎです。」
「そりゃそうでしょ!だって修行始めてから初めての実戦よ。そりゃ喜ぶでしょ。」
「そんなに興奮しないでください。」
「で、実戦といっても何するの?」
「まずは試しにゴーレム12体と戦ってください。」
「は?12体?簡単じゃん。」
「簡単じゃないですよ。」
「は?どうして?」
「攻撃力が通常の3倍、防御力が5倍あります。」
「は?チートじゃん。」
「でも、あなたの力では戦わないでください。」
「なるほど、魔王の力を使って戦えと。」
「わかっているならよろしい」
「で、もう始めてもいいの?」
「いつでもいいですよ。あなたのタイミングでどうぞ。」
「『すべてを壊すもの』」
「では、はじめ!」
「"こんなもの楽勝ではないか"」
「さっきの話聞いてました?」
「”聞いていた。だが、それだけの強化では楽勝過ぎる。”」
「そんなこと言ってないで早く始めてください。」
「”わかっておる。”」
「わかってるなら早くやってください。」
「”
どどどどどどどどどどどどどん
すごい勢いで強化されたはずのゴーレムが倒されていく。
「魔王の力は健在ですね。」
「”ふん。こんな簡単なもの私にやらせるな。あの小僧にやらせたほうがよかったのではないか?”」
「そしたら修行の意味がありません。」
「”そうだったな。では、そろそろ小僧に戻るとするか。”」
「おかえりなさい。グエル。どうでした?久々に魔王の力を使ってみた気分は?」
「ちょっと疲労感がある・・・」
「にしても、さすが魔王。力は10年たっても健在とは・・・」
「そういえばあなたと魔王の関係って何?」
「いわゆる戦友ってやつですよ。」
人間が生まれる少し前・・・
魔王は魔界で暴虐の限りを尽くした。そして、それを阻止するために神が魔王を止めに来た。いわゆる『聖戦』ってやつだ。その『聖戦』の結果は魔王と神たちで和解となった。その『聖戦』の最中、魔王とハーデスは何度も戦い、お互いの良いところ、悪いところを指摘しあっていた。そして、いまでは戦友と呼べるほどの仲になった。
と、ハーデスから語られた。
「そんなことがあったなんて。」
「ははははは。早く魔王と戦いですね。昔のようにね。」
「昔はどれ位強かったの魔王?」
「今も昔も変わりませんね。」
「つまりめっちゃ強いってことじゃん。」
「昔は魔王と互角だったんですけどね。」
「じゃあ今は?」
「少し私のほうが弱いですね。」
「じゃあどうして戦いたいのさ?」
「あくまで今の私の実力を知りたいからです。」
「じゃあ、今からやる?」
「いいんですか?さっき少し疲労感があると言っていたのに?」
「もちろん。疲労感は話してる間にとれた。」
「なら始めましょう」
「『すべてを壊すもの』」
「
「”
神と魔王の剣がぶつかり合う。激しく火花を散らしお互い一歩の譲らない様子である。
「“中々やるな。戦友よ。”」
「それほどでもないですよ。」
「“久々のこの感覚。何年振りだ?”」
「大体1万3000年ぶり位ですかね?」
「“はははは!そんな前になるのか!『聖戦』は!”」
「はははは!改めて考えると『聖戦』はそんな前になるんですね!」
「“
「
お互いが放った弾丸が宙にぶつかりあたりに爆風が起きる。
「“それにして天界で戦うのは愉快!愉快!”」
「やはり我々は考えることが同じみたいですね!」
ガキィン ガキィン ガキィィン
「“
「
炎と雷がぶつかり合う。そして、あたりに黒い稲妻が走る。
「“
「
お互いの最後の一撃が決まった。最後に立っていたのは・・・
「さすがは魔王いまだに力は健在ですか・・・」
「“さすがは神、力は健在か・・・”」
お互い地面に膝をつき、お互いにお互いを褒めあっている。
「“今、こうして戦ってみたが、器は完成しそうなのか?”」
「後、どうですね、数日後には完成しそうですね。」
「“そうか。”」
「それにしてもグエルは中々の逸材じゃないんですか?」
「“どうしてだ?”」
「だって、僕が行ったことちゃんと守ってやってくれてますもの。」
「“それだけ我の力を制御しようと必死なんだろうな。”」
「少し必死すぎて心配ですけどね。」
「“心配することはない。何せ、我の生まれ変わりだかな。”」
「その自信ってどこから来てます?」
「“もちろん。我が死ぬ前の威厳のことから来ている。”」
「そういえば今の魔王って誰か知ってます?」
「“言われれば確かにそうだな。今の魔王って誰なんだ?”」
「あなたを倒したあの“勇者”ですよ。」
「“あの勇者か!”」
「そんなことってありえます?人間が魔人になって、魔王になるなんて。」
「“普通はありえん。”」
「ですよね。」
「“・・・だが、一つだけ噂を聞いたことがあったな。”」
「そんな噂です?」
「魔王を討伐した人間はその魔王の魔力に支配されて魔人になる、とな。」
「そんなことってまります?」
「あくまで噂だ。詳しいことは知らない。」
「やっぱりそうですよね。ですが、やっぱりあの“勇者”が今の魔王だってことは確かです。」
「“どうしてそんなことが言える?根拠はないだろ?”」
「いえ。根拠はあります。」
「“どんなだ。”」
「剣の腕前は魔界一で、容姿は人間そっくりでまさにあの“勇者”みたいだと聞きました。そして、実際、魔界天界会合で会ってみて確かにあの“勇者”でした。」
「“そうか。”」
2人はそんな話をしながら天界の風景を眺めていた。
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