第8話:闇の復讐者たち
「後のことは御願いしますね、私がしていたのと同じように苦しめてください。
でも決して心は壊さないでくださいね」
私はオットーのことは魔族の方に御願いすることにしました。
ルシファーは私のことを大切にしてくれているのか、多くの魔族を側仕えにつけてくれました。
その中でも特に強いと教えてくれたので五人の悪魔です。
蒼穹の悪魔と名乗った彼は、星の光を身に纏い、闇夜に浮かぶ存在です。
その姿は宇宙の無限さと深遠さを具現化し、恐怖と畏怖を引き起こします。
彼の眼は星辰の謎を映し出し、その声は遠く響く宇宙の詩篇と化します。
彼の存在は人間の理解を超え、無限の宇宙の秘密を背負っているかのようです。
彷徨の魂喰いと名乗った彼は、霧に包まれた姿で現れ、歩みを止めた魂を求めて彷徨存在だそうです。
その姿は透明でありながら存在感を放ち、闇の中でのみ視認されます。
彼の触れた魂は凍りつき、その存在は不可逆の消滅へと導かれるそうです。
彼の存在は死と永遠の亡失を象徴し、人々に絶望と不安を与えるのです。
肉体の解体者と名乗った彼は、歪んだ肉体を持ち、血に塗れた鋭い牙を露わにしています。
その姿は怪物的であり、人間の形を脱して蠢く存在です。
彼の嗅覚は死肉の匂いを嗅ぎ分け、その飢えた目は生肉を貪る欲望を映します。
彼の存在は腐敗と死の恐怖を具現化し、人々の本能的な恐怖心を刺激するのです。
影底の翼神と名乗った彼は、闇に身を纏い、翼を広げて飛び立つ姿を持ちます。
その翼は闇の中で羽ばたき、恐怖の風を巻き起こすのです。
彼の姿は影の中に消え、人々の背後から忍び寄る能力があります。
彼の存在は隠された恐怖と背信の象徴で、人々の心に暗黒の影を落とすのです。
時間の踊り手と名乗った彼は、時の流れに溶け込んだ姿を持ち、永遠の旋律を奏でる存在です。
その動きは瞬時にして変化し、時間の神秘を具現化するのです。
彼の姿は一瞬にして現れ、また姿を消す。彼の存在は時間の逆行と無常の哀しみを示し、人々に絶望と無力感をもたらすのです。
私がルシファーのような魔王から逃げ出せるはずありませんから、逃亡を恐れて魔族に監視させているとは考えられません。
ただ、新たな魔族を召還するたびに、私に許可を求めて儀式をさせています。
もしかしたら、人間の許可と儀式がなければ、魔族はこの世に現れることができないのかもしれません。
私はもう一人の魔族に馬車の用意を頼み、ステラとイザベラがいる奴隷競売屋敷に向かうことにしました。
魔族の力なら、転移で移動することも簡単なのですが、それではオットーに化けてステラとイザベラを地獄に落とすことができなくなります。
心から信じていた者に裏切られる苦しみを、ステラとイザベラにも味合わせないと心が晴れません。
まあ、でも、ステラとイザベラがオットーを信じていないという可能性もあるのですが。
私が奴隷競売屋敷にたどり着いた時には、そこは大混乱になっていました。
半狂乱になったイザベラが、ルートヴィッヒ侯爵家の使用人を大勢引き連れて、奴隷競売屋敷を襲っていたのです。
これは正直想定外でした。
金を払ってステラを買い戻すか、権力で交渉すると思っていたのです。
狂気が暴力に走らせたのか、元々凶暴で暴力に訴えるのが普通なのか?
でも、まあ、今となってはどうでもいいことです。
オットーが新たにルートヴィッヒ侯爵家で召し抱えた使用人は、クレーマー侯爵家の使用人一族が多いのです。
クレーマー侯爵家にいると、部屋住みとして当主の顔色を窺いながら、小さくなって生きていかなければいけなかった連中です。
誰だってそんな身分は嫌なので、必死になって自分を鍛えて独立を目指します。
それはどこの家でも同じなのですが、クレーマー侯爵家に限れば、悪辣非道な行いができれば、親や兄を追い落とすことができるのです。
だから親兄弟で暴力と悪知恵を磨き、勝ち残った者がクレーマー侯爵家に残り、負けたものの、何とか生き残れたものがルートヴィッヒ侯爵家に来ています。
だからなのでしょうか?
一味であるはずの奴隷競売屋敷の悪党どもに、容赦なく襲い掛かっています。
生き残るためなら、親兄弟でも殺してきたモノの性なのかもしれません。
主君の命令を妄信して何も考えず非道を行わなければ、今まで生きていけなかったのかもしれません。
ですが、何が理由であろうと、私に対して行ってきたことは許せません。
苦しみ抜いてもらいましょう。
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