第3章 あとは死ぬだけ 第12話 ホシの足跡

「こうちょくちょくお会いするというのもね」

松木刑事は一通りの捜査を終えてから来訪者室にいるアランの所へ来た。来訪者を迎える部屋だけあって豪華な装飾品が飾られている。三田村と高羽は違う部屋にそれぞれ待機しているはずだ。アランが一番格上の部屋ということは一番聞きたいことが多い人物ということだろうかと思うと、この豪華な調度品の重みがのしかかる。

 古いが高価なソファの上で座り直した。今日は田尾刑事は一緒じゃない。もしかすると手分けということで、彼は三田村か高羽の所へ行っているのかもしれない。

「いや、僕は松木刑事とお会いするのは楽しいですよ」

自分でもお世辞なのか、なんなのか判らないが、刑事と会った方が捜査の進行状況が判って嬉しい。

「誰の骨というのは、判りませんが、人骨である可能性は高いです」

パッと見てパッと判るほど鑑識も安易じゃない。流れから行くと、福田先生の骨である可能性の確立が高い。

「腕と膝下辺りの骨が三本でしょうかね」

「中途半端な数ですね」

「砕けていないものを返してきたのかもしれませんね。持ち運びも考えて大きくもなく小さくもないものをサイズで揃えてみたという感じもします」

アランが言うのに、松木が予想を述べる。

「それだけ大事に保管されているということでしょうかね」

かもしれないと思う。一体どういうつもりなんだか。

松木は、アランの様子を伺いながら

「あの箱は、今朝気づいたと用務員は言っています」

「じゃ、昨夜から今朝にかけて持ち込まれたものですか?」

学園には監視カメラがある。それに映っている可能性がある。そもそもどうやって学内に上手く入り込んだのか。

 用務員室ということで、用務員の優太の顔が浮かんだ。

「用務員室に用務員の二人が私物を置くスペースがあって、その辺りにあるのに気づいたそうです。それにメモで、パソコンで打たれた文字で『石神先生に渡してください』とあったので、用務員の島田さんが持参したということのようです」

島田が言っていたことを繰り返した。アランは聞いた。

「片瀬優太さんはお休みですか?」

松木は頷いた。

「連絡はないみたいです。彼としては珍しいことのようです」

アランは手を膝の上で組んだ。

「あの、一見順番が逆になっているようなんですが、福田先生のお父さんの所へ先生の骨が送られ、堀川ゆきが失踪した。今回も僕の所へ骨が届き……つまりまた誰かが失踪するってことでしょうか?」

「そうですね」

松木は考え込んだ。

「石神先生のいう順番で起きていると思われますが……」

じゃ、次は誰が失踪するかというとそれは……。

 学園関係者で、一連の流れの中にいる人物と言えば、今日は姿が見えない片瀬優太が最も可能性が高いと思う。

 場合によっては彼が事件の犯人だからこれから誰かを失踪させるつもりで、その前に本人が姿を隠しただけと考えることもできる。

「片瀬さんね……」

連絡もなく休みになっている優太をこれから警察が訪ねるだろう。もう訪ねているのか。

 だったら、この先の不幸な展開を止めることができるかもしれない。

 

 松木から解放された後、高羽と職員室で顔を合わせた。どうだったとお互いに情報を交換した。高羽は、もう一度確認して優太と連絡が取れないと言った。高羽は取り急ぎ優太の住むマンションを訪ねると言った。

 高羽から連絡があった。優太の姿はマンションになかった。彼は合い鍵を持っていなかったので、管理人の立ち合いのもと、部屋の中まで確認した。特に置手紙があるわけじゃない。特に長期で家を空けるつもりで荷物を持ち出した形跡もなかったという。優太の姿だけが消えていた。

「でも優太が失踪なんて、それこそ理由がない」

高羽は電話の向こうで、当惑していた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る