十一猫目 主神 vs 上位者狩り
「……見つけた」
何も無くなったシモザヴァース。その暗い空間にいたフェイタルは、ついに神の領域を発見した。
コード:オムニ 入力
全能権を行使し神の領域へと続く穴を生じさせた。そこから見えるのは、星の瞬く宇宙空間。そして一つ浮かぶ白い祭壇と、その中心に鎮座する光の球体であった。
フェイタルは祭壇に降り立つと、球体へと歩を進める。すると、球体は眩い光を放ちながらその身を変形させようとして━━━
コード:サモン・
その暇も無視したフェイタルによって超高温、高濃度宇宙線、暗黒波の嵐に飲み込まれた。
神殿は尽く崩壊し、あらゆる生命が死滅する領域が形成される。しかし一瞬の極光と共に嵐は消滅した。
4対の白い翼が浮かび、その中心に光輪と白い瞳がある。
主神シモザの降臨である。
「━━━━━━━━━」
「……挨拶なんていらない」
「━━━━━━━?」
「あなたに用なんて一つしかない。わかってることを一々聞かないで」
「━━━━━━━━━━━━━━━」
「全能神に勝てるかって?……ああうん、それでいい。そうやって驕っていてくれれば、私もスッキリするから」
侵攻前に、フェイタルはこのシモザヴァースにおけるあらゆる統括権を奪取している。しかしシモザ神から焦りの類は見受けられなかった。
あらゆる世界を侵略し、それらを治めていた神々と統合したからこそ、シモザ神はあらゆる権能を所持したまま。シモザヴァースの統括権など放任主義であった彼からすれば元から無いのも同然。
だからこそ彼女は喜ぶのだが。
戦いの始まりは唐突だった。
シモザ神の翼から大量の羽が天へと放たれ、それら全てが鋭利な形に変化しフェイタルへと殺到する。
対しフェイタルはコード:オムニによって眼前に次元断層を形成。しかし羽は次元断層を易々と突破しフェイタルに突き刺さった。そして一度発光した後、その一枚一枚が超新星爆発もかくやという威力の爆発を起こす。
しかしフェイタルもその程度で傷付きはしない。コマンド:オーバーレイによって羽が降り注いでいた時空間をシモザの上方に配置。今度はシモザが羽と爆発とを受けるが、こちらもダメージは無かった。
「━━━━━━━━━」
「…自分の力でも倒れないなんて、哀れ」
シモザの眼光が極光の光線となり放たれる。フェイタルはシモザの背後に瞬間移動するが、シモザの眼球はぐりんっと縦に回転しフェイタルへと照準を合わせ続ける。
崩壊した祭壇の瓦礫を巻き込みながら辺り一面を薙ぎ払う光線。フェイタルもまたコマンド:オーバーレイによって同じ光線を当てることで相殺した。
しかしすぐさま宙を飛ぶフェイタルへと複数の光線が伸びる。フェイタルも躱しつつコマンド:オーバーレイで反撃を試みるも、新たに放たれる光線に迎撃され有効打にはならなかった。
ついには幾つもの光線に貫かれ、真上から極太のビームに叩き落とされる。その先々で光線に弾かれ、最後に数すらわからぬ無限の光弾の集中砲火を受けた。
しかし攻撃の手は緩められることはない。愚かしくも全能たる神に刃向かった蛮行を許さず、神の力を帯びた災害がフェイタルを飲み込んだ。
津波、竜巻、雷、業火、劇毒、核爆発、隕石……数多の厄災が神の力によって本来以上の威力を発揮する。
一言で表すならば地獄。もはやフェイタルの姿すら見えぬほどの暴力の嵐に加え、延々と放たれ続ける光弾と光線。先の宇宙嵐など生温い、生存不可能領域であった。
さらにシモザは世界へ権能を使用した。世界自体の流れる時間が一気に加速する。
1秒で1万年。それをシモザはたっぷりと1時間使用した。
即ち3600万年もの間、フェイタルは地獄を味わい続けたということになる。
ついに攻撃が止み、シモザの周囲から射出された鎖がフェイタルの四肢を絡み取る。
それは痛々しい姿だった。彼女の体は所々炭化し、深い切り傷や骨が折れた跡、そして夥しい血を流している。
そのような姿を晒されても、シモザは一切の慈悲を持たない。シモザの眼前に光が収束し、一本の槍となる。切っ先はフェイタルの胸、つまり心臓へと向けられた。
「━━━━━?」
「……あなたに告げるような最後の言葉は無い」
「━━━━」
槍が放たれる。それはいとも簡単に彼女の肉体を突き破り、その心臓を貫いた。
小さく痙攣した後、ぐったりと力が抜ける。仕留めたと確信したシモザの瞳が愉悦に歪んだ。
シークレットコード
既に、決着はついていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます