忘れる/許す

久蔵久蔵

第1話忘れる/許す

秋霞居座る獏が食む記憶


ワカラナクナツチヤツタ葉月の小声


思い出がのたうち回る秋麗


龍淵に潜む忘らるる釦よ


秋夕焼家へ帰ると探すドア


雨月やごみ箱になみなみと尿


喧嘩して口も手もでる秋笑う


何度でも歌う童謡秋の昼


背を叩き笑う大口秋彼岸


秋雨やトイレにおむつ詰まる朝


夕まぐれ案山子に太郎取られたと


金柑もぐ幼き日の子がそこに


合いの手に笑う手踊り車椅子


細切れな眠りに朝がこない秋


秋澄めり手掴みの指ねぶり食む


微笑みは菩薩に近き夜長かな


無月いにしえの言語めく呟き


宵闇や握る手の強き温もり


稲妻や光たる遠き眼差し


手を髪を撫でる窓辺や冬隣

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忘れる/許す 久蔵久蔵 @hisakurakyuzo

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