花言葉を愉しむ【毒草編】

日埜和なこ

はじめに:花言葉のはじまりについて

 花言葉がある花にも、毒性を持つものがあります。

 ただ美しい花姿で人々の目を楽しませ、良い香りで心を朗らかにするだけではない。

 そんな危険な香りのする毒草と花言葉を、今月はお届けしようと思っています。


 今日は、日本でどのように花言葉が広まったのかを、少しお話ししたいと思います。



 日本に花言葉が伝わったのは明治時代と云われています。

 江戸時代には、空前の園芸ブームが巻き起こりました。戦国時代から一変し、平和が続いたことで、町民も心と懐に余裕がもてたようですね。


 花を楽しむ生活は明治時代にも引き継がれ、花に意味を持たせる「花言葉」は、斬新でありながら馴染みやすい海外の文化だったのでしょう。

 明治時代では女子教育の必要性が意識されたのも、「花言葉」が広がるきっかけの一つだったかもしれませんね。


 何にせよ、開国のおかげで「花言葉」という素敵な文化が、日本にも渡来したわけです。


 そもそも花言葉はどこから始まったのでしょうか?

 諸説あるようですが、トルコ発祥説が濃厚なようです。

 古くから「セラム」という風習があり、贈り物に詩句を添えたそうです。花や果物、植物だけでなく、様々な贈り物に言葉を添えていたとか。

 まだ文字がない時代に、気持ちを伝える風習だったようです。なんともロマンチックですね。


 この風習を、イギリスのコンスタンティノープル(現代のイスタンブール)駐在大使夫人が、美しい文化の一つだと本国で紹介したそうです。

 ただ、その記録が出版物となって世に出たのは夫人の死後で、それほど広まらなかったみたいです。


 では誰が広めたのでしょうか?


 本格的に広まるきっかけは、フランスで貴族階級の女性達が作ったと云われています。

 花を擬人化した詩文集やエッセイが出回っただけでなく、恋を絡めた話を綴った手書きのノートを回覧する、なんてこともあったとか。


 手書きのノートを回覧する……こっそり授業中に創作メモをしていた学生の頃を思い出します。今も昔も、思い付いた話を誰かと共有したい気持ちは変わらないようですね。


 この巷で流行った花の詩集やエッセイを元に、パリで花言葉辞典が発行されました。

 見事、大ヒット!

 海賊版まで出たっていうんですから、相当なムーブメントとなったのでしょう。

 この人気はヨーロッパ全土に止まらず、海外まで広まったそうです。ついに花言葉は、開国をした日本にも伝わったのです。


 ヨーロッパで生まれた花言葉ですから、その言葉の多くはギリシャ神話やヨーロッパの文化、伝統などが大きく影響しています。

 でも、世界に広まることが出来たのは、元となる花言葉が外国で形を変えることが出来たからでしょう。

 

「この花言葉は○○の伝承が元になっている。△△は間違いだ!」

 

 なんてことは言わなかったんだと思いますよ。まぁ、言った方もいたかもしれませんが。


 西洋と東洋に分けただけでも、文化や生息植物に違いがありますからね。さらに、その土地ならではの伝承がある植物も多いと思うんですよ。

 だからこそ、花言葉という概念がゆるく広まることで、各国固有の文化や伝説が混ざりあい、新しい花言葉も生まれたのではないでしょうか。


 日本にも、花に関わる伝承が多くあります。

 以前に綴った「オトギリソウ」の花言葉も、日本で形が変わった言葉といえますね。

 詳しくはこちらをどうぞ↓

 ※オトギリソウは毒性がありません。

 https://kakuyomu.jp/works/16816700428347254810/episodes/16817139556000934442


 このように、西洋と東洋で文化に着目して、花言葉を調べるのは面白いのですが、このエッセイでは有毒植物の花言葉をピックアップしていきます。



 花言葉は心を豊かにしてくれるものだと思っています。

 その優しさに似合いそうもない「毒」を持った花々に関する話題を、楽しんで頂けたらと思います。


 更新は、現在は不定期ですが、週3回程度を予定しています。

 初回は明日、お届けしたいと思います。楽しみに待っていただけましたら幸いです。

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