第9話 優しく包み込むように
「久しぶりだね。元気にしてた?」
ドキドキしながら電話をかけた私がバカみたいだ。
恵麻姉は3コールで出てくれた。
メッセージを送っても良かったんですけどね、すぐに相談したくて。
「はい、元気にしてます」
「そっかそっかー。よかった」
呑気な声。
あれだけグループを荒らしていったのに。
怒りを覚えてもおかしくない状況だけど、そんな感情は見当たらない。
懐かしさの方が
恵麻姉は、どんなときでも冷静沈着。
優しい声音で私たちを安心させてくれていたから。
「で、どうしたの。急に電話してきて」
「あっ」
しまった。
「今電話しても大丈夫でしたか?」
相手の状況を考えてなかった。
最初に確認すべきなのに。
当たり前のことが、できていない。
それだけ私の余裕がなかったってことか。
「大丈夫だよー」
穏やかな声に、ほっとする。
「実は――」
遠回しに言うのは苦手。
単刀直入に、包み隠さず話した。
ゆーちゃんが妊娠したこと。
産むつもりであること。
相手の男と結婚するつもりはなく、私に「一緒に育てて」と言ったこと。
私が彼女のことを好きなことも話した。
「そっか、
全てを聞き終えた恵麻姉は、わざと明るいトーンで話してくれる。
「しかも、『一緒に育てて』かあ。やばいねえ、あははっ」
事の重大さを理解しながらも笑い飛ばしてくれる。
恵麻姉の優しさが嬉しい。
こんがらがっていた頭が冷静になって、引っ込んでいたはずの涙がこみ上げてくる。
「ぐすっ……」
鼻をすする。
「びっくりしたよね。パニックになったよね。
我慢の限界だった。
直接会っているわけじゃない。
それでも、彼女の木綿で包むような温もりに満ちた言葉に涙が溢れ出した。
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