第7話 夢の行く先
「私が断ったら、って考えなかったの」
はいはい、私は貴女が好きだからお腹の子を受け入れますよ。
「私の夢、知ってるでしょ」
すんなり話が進むと考えて行動したのだろうか。
「うん」
あまりにも素直に頷くものだから、
「じゃあっ」
バンッとテーブルを強く叩いた。
思いっきり。
「私を巻き込むってことは」
手の痛みなんかどうでもいい。
「私の夢はどうでもいいってことなの」
それよりも心が痛かった。
女優になるのが私の夢。
アイドルをいつまでも続けられるわけじゃないから。
やり切った後は、女優として活動していこうと考えていた。
「どうでもよくないよ」
ゆーちゃんは、
「私がアイドルを引退して子どもを育てる。つまり、専業主婦。で、あーちゃんは女優として活動する。できるでしょ?」
微笑みながら言った。
「そんな簡単な話じゃないじゃん!」
ここまでゆーちゃんが自分勝手だなんて知らなかった。
「もし、私たちの関係が世間にバレたら? 仕事なんかくるはずないじゃん。誰も私を起用してくれないよ」
手で顔を覆う。
いよいよ涙が堪えきれなくなってきた。
どうして、こんなことになってしまったんだろう。
私の想いに気づいていたなら、告白してくれたらよかったのに。
そしたら……いつかは子どもがほしいねって。
養子か里親か、子どもを育てる道を考えられたはずなのに。
一緒に。
「ねぇ、あーちゃん」
「……」
返事をしない私に構うことなく、ゆーちゃんは話し続ける。
「気づいてる?」
は? なにに。
「『私たちの関係がバレたら』って言ったよね。それって、私たちとの関係を前向きに考えているってことだよね?」
「え?」
愕然とする。
その通りだ。
私は無意識のうちに、ゆーちゃんの言葉を受け入れようとしていた。
「やっぱり優しいね、あーちゃんは。私のこと放っておけないんでしょ。手放したくないんでしょ。そういうところ好きだよ」
違う。
貴女から欲しかった「好き」はこんな形じゃない。
「もう一度言うね。あーちゃん、私と一緒に育ててよ」
でも、正しい「好き」の形なんてあるのだろうか。
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