開幕
第1話 二人の絆
離れていったファンは少しずつ戻ってきてくれている。
「あーちゃん、相談したいことがあるんだけど……この後暇?」
毎週末行っている定期ライブの後、ゆーちゃんが真剣な表情で話しかけてきた。
目を伏せ、落ち込んでいるようにも見える。
ライブ後って大抵みんな疲れてるんだけど、ただ疲れてるってわけじゃなさそう。
「うん、いいよ。いつものご飯屋さんでいい?」
「えっと……できればあーちゃんの家がいいんだけど」
「ん? そっか。いいよ」
「ありがとう」
ほっとしたのか、いつも通りの可愛い笑顔を見せてくれた。
木島
ちょっと丸顔で、高校を卒業したというのに中学生、もしくは小学生に間違われる彼女。
お店を嫌がったってことは、他人に聞かれたらマズイことだな。
内容を想像しながらさっさと荷物をまとめる。
「行こうか」
「うん」
私の後をトボトボついてくるゆーちゃん。
元気がない。
「家、冷凍食品しかないけど……なんか買っていく?」
「ううん、別にいい」
こりゃー相当深刻な悩みっぽい。
だってこの子、うちに来るときは必ずコンビニかスーパーに寄って食料を買うもん。
自分一人じゃ抱えきれなくなった感じか。
こうしてメンバーから頼られることは嬉しい。
特にゆーちゃんは、同い年ということもあって一番仲が良く、誰よりも相談に乗ってきた。
しょうもないことでも。
恵麻姉と真子姉が支え合ってきたように、私たちもいつだって支え合ってきたんだ。
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